寛政6年(1794)夏に豪華な雲母摺りの大判錦絵28枚を一度に出すという華やかなデビューを果たしながら、10ヵ月という短い活躍期間で筆を絶った写楽。そのため、正体を他の著名人に仮託するさまざまな「写楽別人説」が提示され、正体探しが人々の注目を集めてきました。今でも、「写楽は、誰だと思いますか?」と聞かれることが多いのも事実です。しかし、近年は、阿波藩の能楽師斎藤十郎兵衛を写楽とすることで、写楽の正体探しは、ほぼ落ち着きをみせています。本来、写楽が注目されるのは、その正体探しのミステリーではなかったはずです。作品そのものをみてください。その個性的な表現は、作品が描かれた当時も、そして現代のわれわれにとっても多くの刺激を与える力を持っています。本展では、作品を通して、造形の魅力を解きほぐし、芸術的な特徴を明らかにし、魅力あふれる写楽作品創造の源を探っていきたいと考えています。
ゲスト・キュレーターの浅野秀剛氏、マティ・フォーラー氏の協力により、世界的視野で作品を選択した本展は、その質と量において写楽の真の姿を皆様にお示しできるものとなるでしょう。
東洲斎写楽
〈市川鰕蔵の竹村定之進〉
オランダ・アムステルダム国立美術館蔵
©Rijksmuseum, Amsterdam
東洲斎写楽
〈三代目市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と初代中山富三郎の新町のけいせい梅川〉
イギリス・大英博物館蔵
©The Trustees of the British Museum
東洲斎写楽
〈六代目市川団十郎の曾我の五郎、時宗三代目市川八百蔵の曾我の十郎祐成、市川鰕蔵の工藤左衛門祐経〉
アメリカ・シカゴ美術館蔵
Photography ©The Art Institute of Chicago
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