この度、nca | nichido contemporary artは、越中正人の新作写真14点と映像作品で構成される「individuals」展を開催します。越中正人は「集合」と「個」の関係性をテーマに作品を表現しており、本展では二つの素材(火と星)を用いて「個が意思を持って集まった集合のなかでの個の存在意義や集合との関係性」を問いかけます。
越中正人は、彼自身の住む活気に満ちた都市環境への好奇心によって描かれた多様な作品シリーズによって頭角を現す。彼は、未来のほんの一瞬のイメージを捉えるため、リアリティー(現実性)を探求するものとして写真(という媒体)を使用する。それによって作品のなかに新たな生命を与えると同時に永遠性の中で生き続けさせる。
2004年、越中は『those who go with me』と題した最初のシリーズ作品の制作を始めた。それは、彼が強く惹きつけられた集団の中の個人を記録したものだった。このシリーズでは、群衆が個人によって形成されているのか、もしくは個人が群衆を形成しているのかを思索したものである。彼は長時間にわたって人々の群れを観察した後で、精巧な写真技法を用いて個人と個人から形成される集団との脆弱な関係性を描写し始めた。それは、一人として同じ人間が存在しないように、全ての人が現実を同じように見ているのではないということを明示している。越中は、現実の無限にある解釈の一側面を表現しているということである。
彼はさらに、群衆の中の二人、つまり個人とその隣人をより近距離からとらえた『the window is the door』という二作目のシリーズにおいて、このテーマを発展させた。三作目のシリーズにあたる2006年『a view from the view』や2007年『echoes』でも、個人と集団の相互作用が主題になっている。この卓越したシリーズによって、彼は2008年にUBS Young Art Award for Asiaを受賞した。
彼は、同じコンセプトのもと、独自の感受性と好奇心を持ってアーティストとしてのキャリアを積んでいった。しかし、さらなる彼の狙いは「時間」という概念を探究し、それを新シリーズの中へと取り入れることだった。『double word』で彼は眼を自然へ、そして花の一連の成長へと向けた。このシリーズの各作品で異なるモチーフと技術を用いて制作され、「時間」という世界万物の存在に付随する事象を明らかにしている。
彼は新作写真シリーズ『individuals』で、もう一度、時間概念の中に新しいテーマを見分ける作家特有の能力を明示している。ここでもまた時空間の次元を歪ませる平行現実性を導入することによって、彼は観者の時間感覚と戯れる。遥か彼方の地平に存在する星は、あなたの目の前で揺らめく火と同じ時間・同じ空間において認識される光を形成している。一方は何十億光年離れた次元にあり、もう一方は観者の目に近い手の届く距離に存在するが、それは作家が一次元的な写真の中にとらえた後で失われ、おそらく忘れ去られるであろう。これは二つの自然要素への新しくてユニークなアプローチである。
- Dr. ペトラ・アレンズ=パッツァー
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