このたび、island MEDIUMにて、勝正光個展を開催致します。
勝正光は、『一枚の絵の力』展でも2年ぶりの新作の作品を出品して下さいましたが、鉛筆の黒が鉛になるまで、絵を描いているというより彫刻していると思えるところまで、白い紙に黒い鉛筆で塗りつぶすような作品でした。
一見ただの黒い画面ですが、単に自己を表出したいだけではない、この2年、様々に引き受けてきた物事や人との関係、考えたこと、その時間がつまったような、簡単には通り過ぎられない、説得力を持っているように思いました。
今回の勝正光個展は、ほぼ3年ぶりとのことですが、そうした作家、あるいは一人の人間、勝正光の、「いま」を伝える、そして世界に向き合い表現を通して伝える、決意表明のような、展示になります。
どうぞ、ご高覧いただけたら幸いです。
[作家マニフェスト]
私は大阪で生まれ、和歌山、横浜、再び大阪、と移動し、大学で東京に出てきて、卒業後に美術家として活動を始め、それから4年後、別府に移り住んだ。
別府に移ったのが転機となり、境界を越える開放感に浸るよりそれぞれと向き合う方が大事なのではないかと感じるようになり、別府に移動してからは特に人を介在させた暮らし(詳細はここでは割愛する)を試みている。
そういう中で私は、鉛筆で描く絵を作品として発表しており、現在は主に別府でうまれた、暮らしている中で出会ったその人の大切なストーリーをたとえその写真が残ってなくとも近い写真で想い出に忠実にコラージュし、それを鉛筆で写実的に描く表現を続けようとしていて、今個展では、東京でうまれた、鉛筆と紙で絵とも彫刻ともとれる限りなく2次元に近い彫刻物として境目に立つ存在を象徴的に形する表現と共に展示する予定である。
情報インフラが超発展の最中にある今、都市と地方、同時代性と個人、様々なレベルを情報として知ることが可能になってきたため境界線が曖昧になりがちだが、それぞれが感じているリアリティは違う。グローバルに世界を知覚するため境目の曖昧さも重要だが、それがそれぞれのリアリティの無視に繋がっている。
自分たちで自分たちの住みにくい世界にしているのを食い止めるためには、様々なレベルでのリアリティを尊重することも重要だろう。曖昧さも受け入れながらも、それぞれのリアリティを曖昧に済まさないために、これからもいま居る場所を尊重しながら世界と接続出来る美術作品として絵を描く試みを続け、曖昧さを明るく照射しうる今日ならではの絵の成り立ち方が立ち現れるよう、引き続き提示を続けていく。
移動して住んで生活して向き合って絵を描く旅が、始まったばかりだ。
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