1964年愛知県に生まれた三田村は、1993年よりアーティスト活動を始め、これまで世界各地でインスタレーションを中心とした発表を重ねてきました。2006年には、ゼセッション美術館(オーストリア)において、日本人としては荒木経惟以来となる個展を開催したほか、東京都写真美術館、モスクワ現代美術館(ロシア)、ザルツブルグ近代美術館(オーストリア)など国内外で開催された多数のグループショウに参加、現在も2010年ターナー賞受賞作家のフィリップ・スーザンらが参加する水戸芸術館現代美術ギャラリーでのグループショウ「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」(5月8日まで)に参加しています。また4月上旬よりメルボルンのアーティストインレジデンスに参加することが決まっています。
三田村の作品は、「人が足を踏み入れられる三次元のドラマ」。写真や映像、家具や小物が物語の挿絵のように配置されたインスタレーション作品には、三田村自身の個人的な記憶や追憶が繊細に張り巡らされており、それらは私小説を読むように私たち鑑賞者の記憶に呼応します。その行間に漂う気配は、気を抜けば指の間からこぼれおちる砂のように、はかない「時」を創り出しています。
本展では、海外での展覧会や滞在制作に向かう道中やその行った先で、これまで三田村が撮りためてきた写真作品シリーズ「empty element」「Frame」の中から水辺の風景の作品を展示いたします。
「hannele」 2009
デジタルCプリント 58×78cm
知らない街に行くと、水辺をひとりで歩いている。
人が暮らすところには水辺があって、古くからの友達のように私を受け入れてくれる。
水辺に立つと、生まれた場所からずいぶん遠くに来たと思う。
でも、この水はどこかで私が生きてきた場所の水とつながっている。
自分の足で、私が私をこの場所に連れてきた。
その道のりを少しの間ふり返り、重ねてきた時間を愛おしく想う。
とても静かに。
解説
旅先で撮り溜めた写真を眺めると、たくさんの水辺で撮った写真がありました。
展示や制作のために海外へ行く時も、街をゆっくりと歩く時間はあまりありませんが、ふとしたときに、街を流れる川や海や湖のそばをひとりで歩いています。
私のインスタレーション作品やビデオ作品の中にも、気がつけば数々の水辺が登場しています。
水辺はいつも、自分が生きてきた人生を、ふと立ち止まってふり返る時間を与えてくれます。
この写真たちをご覧頂いているころにも、私は知らない街の水辺に立っているでしょう。
三田村光土里
「marriage」 2011
デジタルCプリント 19×24cm
「boat」 2007
デジタルCプリント 24×19cm
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