タグチファインアートでは新スペースのお披露目として、上記の期間約1ヶ月にわたり、陳若冰(チェン・ルオビン)のデビュー以来これまで12年間にわたる仕事を回顧する展示をおこないます。
陳若冰は1970年中華人民共和国生まれ。杭州美術アカデミーで書と水墨画を学んだ後、1992年に渡独、1998年にデュッセルドルフ美術アカデミー、G. グラウブナー教室を修了しました。同年にメーアブッシュのコンラド・ミュンター画廊で初個展。2000年にはアーティスト・イン・レジデンス・プログラムで数ヶ月間、アメリカ・コネチカットのジョセフ・アンド・アニ・アルバース財団に滞在。現在はドイツ、デュッセルドルフと中国、北京にスタジオを構え制作活動を続けています。
陳若冰はデュッセルドルフ美術アカデミー在学中から、単純な幾何学的形態を反復してキャンバスに不規則に描き、「地」と「図」を等価関係に置く絵画作品を制作してきました。これは彼が身につけた中国絵画の伝統と、現在そのなかで暮らす西欧近代とを作品のなかで統合しようとする試みです。 奥行きを浅くした装飾的ともいえる絵画空間と水墨画を思わせるアクリル絵の具の微妙な滲み、画面内奥から作品外部に向かって溢れ出るかのような形而上学的な光、深い精神性を湛えながらもどこか楽しげな形態と色彩、これらによって陳若冰は独特の魅力的な作品を生み出します。近年は光の量塊をモチーフに作品を制作、新たな展開を見せています。
すでに20年近くドイツで生活している現在、ヨーロッパ文化のなかで制作する中国人画家というその基本的な立場こそ変わりませんが、陳若冰は中国絵画と西洋近代絵画の対立という構図を軽々と飛び超え、すでに独自のスタイルを獲得することに成功したといえます。
2005年には上海美術館で個展を開催、2006年には中国浙江省嘉興市に彼の作品と中国の古美術品のみを展示する陳若冰美術館「House of Light」が開館、また日本では資生堂ギャラリーにおける「An Existence 素景」展にも出品しています。北京の一月当代画廊や上海の泉水辺画廊、韓国ソウルのコング画廊などで定期的に展覧会を開催、中国や韓国の美術館に作品が収蔵されるなど、今や陳若冰の活動はヨーロッパのみならずアジアでも大変活発となっています。
タグチファインアートで7度目の個展となる今回は、日本で優に100点を超える数となっている個人所蔵作品からの借用を含め、初期の貴重な油彩画から新作のアクリル画まで約20点の絵画を展示致します。若干40歳、作家としてはまだキャリアの初めの段階ではありますが、その絵画世界の豊かさ、深さは成熟した画家を思わせます。ぜひご高覧下さい。
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