MA2ギャラリーでは伊庭靖子展を開催いたします。
2006年の当ギャラリーでの個展以降、2009年「まばゆさの在処」(神奈川県立近代美術館、鎌倉)でこれまでの代表的な作品が展示された個展、2010年「椿会展」(資生堂、東京)での展示など、いま最も注目されている作家のひとりです。
伊庭はクッションや器などの日常的なモチーフを、自ら写真に撮り、そのイメージを素材としてキャンバスに描きます。作家によって意識され描かれた、滑らかなその陶器の光沢や、布の表面の質感から、わたしたちは手触りや、柔らかさ、果物ならば美味しさやみずみずしさなど、日常では見逃してしまいそうなモノの在り方を感じることができます。あたかも「感覚」そのものを見ているかのようです。
2003年頃から描かれていた白く無地の布団や枕から、近年は模様のあるクッションがモチーフとなり、模様が大事な要素となりました。「感じたい質感が模様によって遮られると、その質感のみを得ようと意識する」、「模様によって気づかされるものの輪郭がある」、と伊庭がいうように模様を描くことによって伊庭の意識は更にひろがり、"見える"世界がつねに更新されて、新たな作品が生み出されています。
新作では、描かれるクッションや陶器の模様の入れ方が変化したことで、線の密度が増し、その層を通すことで物の質感と量感の感じさせ方が奥深くなっています。「見る、感じる」ことをさらに強く意識させてくれる世界になることでしょう。
「絵ではなくて物に近づいている」という伊庭の新作による個展を是非ご覧下さい。
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