丸山直文の絵画は"見ること"においていつも新しい体験を私たちに与えてくれます。私たちは日常的に遠くや近くを見たり、あるいは止まって見ているだけではなく動きながら、そして考えながら対象物を見ています。本展の作品で丸山はこの複雑きわまりない行為―見ることを1枚の絵の中で描いています。
"The puddle in the woods 5"(森の中の水たまり)と名づけられた作品は丸山が森を歩いたときの経験を元に制作しています。森の木々は点在する鮮やかなしみによってその輪郭があいまいになり、重なりあう木々は画面を分割し、形をうみだします。そして樹皮の模様に見えていたものはいつのまにか見知った図形のようにも感じられます。ぼやけた形が木や枝という意味を呼び寄せ、そして別の形と色彩がその意味を解体する、私たち鑑賞者の頭の中では認識と失認の作業がたえず行われることになります。
丸山が用いる、ステイニング-滲みやぼかしによって描く技法-は"色(光)を吸い込んでからゆっくり吐き出す、呼吸しているようだ"と作家は言います。その呼吸は私たちがそこに何を見出すか、どのように語りかけるかによって表情を変えます。私たちは自由に見ることができるのです。
丸山直文は1964年新潟県生まれ、現在東京を拠点に活動をしています。主な個展に2009年「丸山直文展-後ろの正面」目黒区美術館(東京)、2005年「朝と夜の間」シュウゴアーツ、主なグループ展に2010年「椿会展2010 Trans-Figurative」資生堂ギャラリー(東京)、2006年「ベルリン-東京」Neue National galerie(ベルリン)、2005年「秘すれば花」森美術館(東京)、2003年「ハピネス: アートに見る幸福への鍵」森美術館(東京)など。シュウゴアーツでは5年ぶりの展覧会となります。
SHUGOARTS
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