1980年生まれの上條花梨は、2006年に東京藝術大学大学院美術研究科を修了いたしました。メグミオギタギャラリーで開催された過去二回の個展において、独特の技法で創造された世界観で注目を集めました。
上條が使うスパッタリングという技法は、まず油絵具をつけた筆を指で弾いて粒子を飛ばし、細かい色彩のドットで画面を覆います。そして画面の凸凹をサンダーで削り、平らな表面にします。この工程を繰り返し、筆の痕跡を消した古い写真や、荒い映像のようなイメージを作り出します。人のいない公園の遊具や、古い写真やおもちゃを組み合わせた静物画など、どこか懐かしいようでいて、見たことのない光景を、スパッタリングで描く事で不思議な印象を残しました。
今展 "Stray Dog"では、アーティスト・イン・レジデンスの訪問先であるフィンランドで作成した作品を中心に発表いたします。
『フィンランドのよく分からない土地でぷらぷらしていて、何か現実に存在しているような気がしなくて私は迷い犬みたいだなあと思い、"妙なところに入り込んでしまって不安感を抱きつつ、でも淡々としながらさまよう迷い犬の目線" をイメージして作りました。』
紙人形とおもちゃのインテリア、目にした植物を図案化した壁紙と古い人形、フィンランドの田舎風景を背景に描かれたおもちゃの静物画など、上條の描き出すユーモアと不条理が混沌とした世界は、その精巧な技術によってリアルな光景のように映ります。どうぞ「迷い犬」になって絵の中を彷徨いながら"Stray Dog"展をお楽しみ下さい。
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