このたび、NANZUKA UNDERGROUNDは、黒川知希(1975-)の新作個展を開催いたします。黒川は、1975年三重県に生まれ、以後美術の高等教育を一切受けずに独学で絵を学んできた異色のアーティストです。黒川は、アイロニカルに自身を「アウトサイダー」と呼んでいますが、そうした自身の白紙のキャリアを武器にしながら、常に大胆な挑戦を試みている杞憂なアーティストです。
今回の個展において、黒川は100号キャンバス10枚からなる約8m×2.6mのペインティング1点と新作の立体作品1点を発表いたします。2度目の個展となる今回の展覧会で、黒川は「無からの価値創造」という芸術の最も根源的なコンセプトにより忠実であろうと約1年の歳月をかけて1枚の巨大な絵画に挑戦しました。
黒川は、自身の作品を最も的確に表す言葉として、「Trash Painting」という通称を好んで用いています。私たちの生きる現代社会では、実に様々な画像が日々配信され、また同時に捨てられています。黒川は、ゴミと化した雑誌や本、広告、あるいはインターネット上に散らばる無数の画像を拾い集めてスクラップすることを日課とし、それを自身の創作活動の原点としています。こうした黒川の行為は、単にアーティストの私的な図像への関心だけでなく、私たちの価値基準に対する問題提起でもあります。「イメージの消費」、「イメージの耐久性」、あるいは「イメージのヒエラルキー」などといったテーマは、アートの現在がまだ未解決のまま包括している課題に深く関係してくるからです。
また一方で、何の価値も持たなくなったもの、無視されているものに向ける黒川の眼差しは、鋭く私たちの社会状況を風刺しています。私たちは時として私たち自身の価値を判断し合ったり、その存在を意思的に、あるいは無意識のうちに抹殺しているということを、黒川は知っているからです。黒川は、例えば現代社会の孤独が引き起こす様々な事件を前にして、アーティストの役割やその可能性について言葉少なく自問を続けています。
「問題の矛先は外ではなく、常に自分の中にあるのかもしれない。初めて絵を描きたいと思った衝動を少しでも体現できればと常に思っている。」
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