古伊万里とは江戸時代に作られた伊万里焼の総称です。古伊万里の分類については、作られた時期や作風によって、初期伊万里、古九谷様式、柿右衛門様式、金襴手様式の四つの様式に大別することができます。戸栗美術館でも、今年度はすでに「初期伊万里展」(4月4日~6月27日)、「古九谷展」(7月4日~9月26日)を開催しています。しかし、様式ごとにスポットを当てた展示では、伊万里焼の変遷の様子や、それぞれの様式のつながりなど、江戸時代を通しての伊万里焼の全体像を見ることができません。
そこで、本展示では、歴史的な背景を鑑みた上で、江戸時代の伊万里焼の展開を分かりやすく辿ることを目的とし、古伊万里の系譜を概観します。
色絵 菊牡丹文 壺
豊臣秀吉による朝鮮出兵(1592~1598)の際、日本に連れ帰られた朝鮮人陶工のもたらした技術をもとに、17世紀初頭、佐賀県有田町の地で作り出された日本初の磁器・伊万里焼。伊万里焼は当時高級品として珍重されていた中国陶磁を模倣し、国内の上層階級に浸透していきました。初期の段階では、白地に青い文様が浮かぶ「染付」が中心に作られましたが、17世紀中期には技術革新が行われ、カラフルな絵付けを施す「色絵」の技術を獲得しました。17世紀後半には大航海時代の流れに乗って、ヨーロッパへ運ばれる輸出磁器として大きく発展し、国内外からの需要により製磁技術も洗練されていきます。18世紀中ごろになると伊万里焼の輸出がしだいに減ったため、新たな市場が求められて庶民階級にまで普及し、江戸時代を通じて作り続けられました。
本展示では、世相を反映し、需要に応じて変化していった古伊万里の変遷を解りやすく辿ります。
(出展品数:約100点)
〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-11-3
TEL: 03-3465-0070