1983年大阪市生まれの野田仁美は、本年3月に京都市立芸術大学美術研究科修士課程を修了し、現在に至ります。野田は2007年「眼差しと好奇心 Vol.2」、2008年「Vol.4(台北)」で作品を発表し、2010年に桜庭一樹著「道徳という名の少年」の挿画を手懸けた事により高い評価を受け、自身の表現に新境地を開きました。ミヅマ・アクションで初めての個展となる今展では、昨年から手掛けはじめた水彩と油彩の作品を中心とした作品を展示いたします。
今回のタイトル「子供の情景」"Scenes from Childhood"は、シューマンのピアノ曲から取りました。
この曲はこどものための練習曲ではなく、子供を描いたおとなのための作品です。野田は、これらの曲から着想を得て、2007年に鉛筆で描いた「ピアノの発表会」の作品をより発展させました。
野田の描く世界は、子供たちが遊んでいる情景であり、日常の風景を捉えています。が、一見するとどことなく不安定で不気味な印象を受けます。それは、子供たちの住む世界の中には、無垢や無邪気さの中に潜む悪戯心があり、無知であるがゆえに大胆で、予測不能なドキッとする行為を描いているからです。野田が描く作品には、潜在意識における残酷さや恐怖、純粋な中に潜むエロスやナルシズムが滲み出てきます。そして、そこには自分に対するもどかしさや感情の揺らぎといった誰もが持つ漠然とした不安が投影されています。
その世界は、野田の見た世界かもしれません。しかし、その物語は続いていき、誰かの話につながっていくのだと思います。いつか経験した風景。どこかで感じたことのある情感。作品に内包されたそれぞれの風景と数々の物語。これらの作品をぜひご覧ください。
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