現実と妄想の狭間を圧倒的な描写力でもって描く城戸は、魂の交流という永遠のテーマを追求しています。
この度彼女の触手が伸びた先にあったのは、飽和する物質とメディアから垂れ流される理想像が渦巻く現代の都市において、孤独にじわじわと蝕まれる存在でした。
20代半ば。都会の派遣社員。そんな女性の孤独な営み。
実は幸せの種が身の回りにコロコロ転がっているのだが、それに気づかない日々をやり過ごしている。
恋愛や人間関係に悩み傷付きながら、度々インチキ占い師のもとへ通う女性。
彼女とのやりとりを経て、偽りだった能力が徐々に開花してくる占い師。
その間に生まれる、奇妙な相互作用。
会社帰りに占い師のもとを訪ねたある日の夜、女性は夢を見る。
不思議な体験をして夢遊病のようにさ迷い、気が付けばそこは自分の部屋。
呆然としつつも、女性は理解する。
何か体が軽くなったような、魂が洗浄された感覚に包まれている事に・・・。 (城戸 悠巳子)
世の中によって破壊されてゆく脆く儚い存在と、占いという不確かなものによって引き起こされる泡沫のカタルシス。
口の端に血を滲ませこちらを見つめる虚ろな目の女性が描かれた作品では、その心の歪みがキャンバスの形にまで表現されています。
城戸が紡ぐ現代の病理の物語を、この機会に是非ご高覧下さい。
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