岩崎貴宏は1975年広島県生まれ。広島市立大学、エジンバラ・カレッジ・オブ・アートで学んだ後、広島を拠点に制作を続けながら、国内外の数々の展覧会に精力的に参加しています。近年では、「六本木クロッシング」(2007年森美術館)、「日常の喜び」(2008年水戸芸術館)、第10回リヨンビエンナーレ「日常のスペクタクル」(2009年)、「EVERYDAY(S)」(2010年 Casino Luxembourg)に参加するなど、目覚ましい活躍を続ける若手作家です。今年6月には、Art BaselのArt Statementsセクションに岩崎の個展プロジェクトが選出され、池の水面に映る平等院の一瞬の姿を捕らえた作品をはじめとする、様々な時間軸をテーマにしたインスタレーションは多くの人々の注目を集めました。来年5月にはドイツのNassauischer Kunstverein Wiesbadenでの大規模な個展も決定しています。
ARATANIURANOでの初の個展となる今回、岩崎は、「生物にあらわれる遺伝子型と外的環境から影響を受けて作られる性質」という意味の「フェノタイプ(表現型)」という生物学用語と、「再構築」、医学用語では「不完全修復」をも意味する「リモデリング」という2つの言葉をキーワードに、あふれかえる日用品がそれぞれにもつ情報を抽出し、あたかもプラモデルを組み立てるように都市をリモデリングするインスタレーションを発表致します。
「日用品がもつ素材や、そこに残された情報を遺伝因子のように捉え、その一部分を選択、分解、再構築させて一つのモデルを作る」と自らが言うように、岩崎の作品では、タオル、スカーフ、靴下から引き出した糸で鉄塔が築かれ、本の栞の糸からクレーンが生まれ、シャーペンの芯で電柱が打ち立てられ、消しゴムで彫られた山脈が出現するなど、普段我々の生活の中に溶け込み、改めて凝視することすらない日用品の素材で、都市や自然の再構築されたミニュチアが作り出されます。わずかに触れただけで壊れてしまいそうなほど非常に繊細な素材で精巧に作られた作品からは、軽妙さやユーモアだけでなく、危うさ、儚さ、また素材自身の記憶をも読み取ることができ、現在の我々の生きる風景、社会の姿を映し出しているようです。
ミニチュアライズされ再構築された岩崎の造形世界と、我々が見慣れているはずの世界とのギャップが生み出す緊張感は、観る者の視線を縛る強い磁力を放ち、驚きと発見を与えてくれることでしょう。
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