「・・・鬱蒼と茂る植物、絡み付く蔦、木々の隙間から差し込む光、
遠くで聞こえる鳥の鳴声、どこかに潜む動物、
ザワザワと動く昆虫、フカフカの足の感触とその下にいる微生物・・・」
森は俯瞰すると植物によって一面を覆われているように見えますが、
その内側には底知れぬ生命の息吹や死など未知の世界が広がります。
現代アーティスト・山田純嗣はそんな森に魅力を感じ、
これまで多くの作品のモチーフにしてきました。
「我々は日々をフラットな世界で生活し、
生や死といったことを日常的に感じることはあまりありませんが、
もし手つかずの森の真ん中に何も持たずに放り出されたなら、
自分自身も自然の循環の一部として、生や死などをダイレクトに感じることになるでしょう。
今までに経験したことのないようなことや、自分自身の五感を
すべてフル稼働させても捉えきれないような状態は、
不安な気持ちにさせられるのですが、ある側面では
未知のものに対する希望のような魅力もあります」
今回のテーマである「Distance In Forest (森の距離)」が生まれたのは、
森をモチーフとした作品の制作を通して対象の中からの距離と外からの距離を測り、
自分の取り組んでいることの実態を掴みたいという思いからでした。
森の中では目の前のものや自分を取り囲む物との距離、
葉っぱ一枚とってもどの木から生えているのか判断するのも難しく、
まして、森全体を簡単に一挙には捉えきれない、そういった中に身を投じて
一つ一つ丁寧に見つめているような感覚を作品にしたい、
また一方でそうしているところを客観的に眺めたいと山田は言います。
当画廊で1年2ヶ月ぶりとなる今回の個展では、
独自の技法のインタリオ・オン・フォト※で制作された新作を中心に約15点を発表します。
※インタリオ・オン・フォト
・・・モノクロプリントされた写真用印画紙(ゼラチンシルバープリント)の上に、
エッチングプレス機を用いて直接刷る作家独自の技法。
ゼラチンシルバープリント特有の奥行きのある滑らかな階調と、
凹版特有の紙表面にのったインクの立ち上がりによるマチエールが同時に得られるのが特徴。
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