「森」と「川原」。細川剛が見続けた、二つの自然を、今改めて見つめ直す―――。
青森県の山岳部に広がる白神山地や八甲田などのブナ林が織りなす原生の森。そこは、生態学的に極相に達した時間が、太古より今日に向かってとうとうと流れ続けるとても安定した場所である。かたや、十和田市のまっただ中を流れる奥入瀬川。すでにあの風光明媚な「奥入瀬」の姿を失った、ある意味、日本中のどこにでもあるありふれた〈タダの河川敷〉。一方はつねに貴重な自然と呼ばれ、守られ、悠久の時間に支えられながら静かにめぐり回る場所。もう一つは、人間の生活空間に身を添わせるが故に人の都合に翻弄され続けている場所。あまりにも違う顔を見せる二つの自然を、同じように大切なものだと細川は言う。
30年にわたって写真家・細川剛が撮影してきた「森案内」「あの樹に会いに行く」などの森に関わる仕事と、「僕の川原日記」「みずたまりにやってきた」「ぼくはすすき」などの川原に関わる仕事の中から、何が違って何が同じなのかをもう一度読み起こしてみたい。
細川のカメラを通した視線の先には、きっと、我々にとって身近で遠い〈自然〉を読み解き付き合っていくためのヒントが隠されているはずだ。
「森案内」(1997)より
「奥入瀬川、僕の川原日記」(1999-2000)より
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