梅津庸一は1982年山形県生まれ。東京造形大学絵画科卒業後、第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展(2006年)で準大賞を受賞、2009年にはVOCA展(上野の森美術館)に選出されるなど、期待の若手作家です。梅津の作品は点描のような独特の細かい筆致が特徴的ですが、油彩画、金属の先端で描かれたメタルポイントの素描、ペン画、そしてそれらの平面作品を日常品と一緒にインスタレーションの一部として展示するなど、表現方法は様々です。自画像や親族のポートレート、個人的に思い入れの強いものなど、自らを形成するモチーフをメインとしています。
森千裕は1978年大阪府生まれ。京都市芸術大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻修了後、「夏への扉──マイクロポップの時代」(2007年/水戸芸術館)、「絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から」(2010年/国立国際美術館)に参加するなど目覚ましい活躍を続けている次世代を牽引するアーティストの一人です。森の作品のスタイルも、廃棄物や日常品で出来た立体作品、紙やパネルに水彩、鉛筆、墨などを用いて描かれた平面作品やドローイングなど実に様々です。我々を取り巻く混沌とした情報の断片がいびつに合体したような、意図的に解体され、そして再構築された画面は、絵画の新たな可能性をも示唆しているかのようです。
森千裕
「明るい夜(新しいバランス)」
2007年
紙にインク、フェルトペン
12.5×17.7cm
本展は、梅津庸一が森千裕の作品に関心を持ったことが発端となり、梅津自らが企画、森を招いて実現することとなりました。単なる同世代作家の友情からスタートしたほのぼのとした二人展ではなく、自分たちの作品の共通点、相違点を通して、「見ること」そして「描くこと」について、もう一度考え、問い直したい、というような二人の真摯な姿勢が原動力となっています。
森さんの作品を初めてみたのは2005年で その時から良くわからない感じが気になっていました。今年の春に森さんのホームページにメルアドが載っていたのでメールしてみたのがこの展覧会のきっかけです。
「cosmetic girl and tired boy」という展覧会タイトルは、森さんが何年か前に考えたという言葉をそのままあてました。この展覧会を表す唯一の言葉に思えました。
2人の作品に共通点はあまりないのですが、対照的と言うほど離れているわけでもないと思います。同世代の友愛や近親憎悪ではなく、作品同士の意味、視覚世界が衝突したりすれ違ったりするところを見てみたい。言葉じゃないポエジーのツボみたいなものにドキドキしたい。
質、見方が均一化、簡略化していくような気運には沿わない、それぞれの方法でアプローチするのだと僕は勝手に思っています。
そんな秋のさわやかな展覧会です。お互い新作を持ち寄ります。
梅津庸一
本展では、梅津は油彩画と漫画、森は水彩画と立体作品を展示いたします。成り立ち方の全く異なる互いの作品がどのようにぶつかり、そして影響し合うのか、注目の若手作家二人による緊張感溢れる展覧会に是非ご期待ください。
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