タカ・イシイギャラリーは、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、スターリング・ルビーのギャラリー初個展を開催いたします。今個展において、ルビーは単一のテーマを基にしながら様々な作品群を展開いたします。ルビーは自身の制作活動を通して、「抑制」や「解放」といった概念と絶えず向き合い、マテリアルとコンテンツを転覆させることによって生まれる予想しえない美をもって、鑑賞者をよりいっそう惹きつける作品を構築します。
今回展示される新作群は、台座上に置かれたブロンズ作品、フレームに収められた鮮やかなオレンジ色の紙の上にコラージュを施した作品、吸血鬼の口をモチーフとしたソフト・スカルプチャー、そしてルビーの代名詞である部分的に漂白した布によって制作された、中央部にまるで渦のような空間を穿った正方形作品です。今インスタレーションの反復的・模倣的な構成の視覚的手掛かりとして、ルビーはキルト工芸を参考としています。直線的かつ幾何学的な作品の設置には、各作品群に垣間見る事が出来る反復的模様(反復される要素)を強調する意図が存在します。また、展示作品はブロンズやコラージュといった伝統的な美術作品制作のための素材と、ソフト・スカルプチャーと正方形作品に用いられた、ありふれた工芸素材とが合わせて展示されます。
「HEAD TREKKERS」と題名されたコラージュのシリーズにおいて、深い宇宙のイメージは惑星に似た人間の頭蓋骨と並置されます。このコラージュの配置からは、宇宙に至るような幻覚体験と抗えない死のヴィジョンが呼び起こされます。「SOFT VORTEX」のシリーズも宇宙的な描写を用いおり、虚空を認識することを嘆いたポスト・ミニマリストのタペストリーに類似しています。ブロンズ作品群はルビーのセラミック作品と強く関連するもので、これらもまた美術治療法の心理学的要素を色濃く内包しており、固形化以前の素材の鍛造性の遺物なのです。「VAMPIRES」は血の滴る牙が生えた口が浮遊するファブリック作品です。このぽっかりと開いた口腔はルビーの「消費」への関心を掻きたて、「アートは解放を求める循環的な試みである」という自身の考えを表現しているのです。
Art Center College of Design(Pasadena)にてMFA を取得後、ルビーは自身の作品を幅広い国々で展示して参りました。最近の主な個展・グループ展として、「New Photography」 ニューヨーク近代美術館(2009年)、「Grid Ripper」Galleria d'Arte Moderna e Contemporanea (2008年、Bergamo) 、「Stray Alchemist」Ullens Center of Contemporary Art(2008年、北京)、「Supermax 2008」ロサンゼルス現代美術館(2008年)にて作品を発表しました。2009年にはベルギーのファッションデザイナー、ラフ・シモンズの東京ブティックの内装デザインを手掛け、後にシモンズのデニムウェアラインにおいてコラボレーションを行いました。また、ルビーは今年7月から10月まで開催される瀬戸内国際芸術祭2010にて作品を展示しています(福武ハウス、女木島)。2011年にはPace Galleryの北京スペースにおいて個展を開催予定です。
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