ペアの存在のしかたは、時空を超える"距離=愛"の問題だと思う。
小林正人
シュウゴアーツでは小林正人の新作展"LOVE もっとひどい絵を 美しい絵 愛を口にする以上"を開催いたします。小林は絵画がどのように存在しうるか、その可能性を押し広げてきた希有な作家です。今回の展覧会では、小林がペアとよぶ、2点1組を前提に制作された作品を展示いたします。ただしその2つの作品には対比や相似といった外見上の関係性や、2つそろって初めて意味をなすといった内容的な関係性はまったく存在しません。絵の具の塊によって形作られた女性の顔と横たわるヌード、膨らみをもった光輝くキャンバスと裸体の立像、そして未だペアの存在しない、こちらをまっすぐ見据える赤い目と青い目の人物。
これらの作品に現れている不必要なまでの絵の具の盛り上がりや投げつけられた絵の具、そしてキャンバスを木枠に張りながら描くことによってできる襞や折れなどが慣習、偏見といったことから離れた即興的な行為の痕跡をとどめています。そこでの徹底した即興性には予定調和や絵画の前提といったものが微塵も感じられません。この純粋な、純度の高い表現が小林の意志を信じさせる力を生み出しています。だからこそ小林が"愛"とよぶ、二つのものの間の説明不可能な結びつきを私たちはそこに見いだすことができるのです。
私たちが現代において芸術を本当に信じることができるとしたらそれは"ひどい絵"によってなのかもしれません。
小林正人は1957年東京生まれ。1984年東京藝術大学美術学部絵画専攻、卒業。1997年から10年間ベルギー、ゲントにて制作活動を続けたのち2007年から広島県福山市に拠点を移して制作しています。
現在、ポーランド、ポズナン(Poznan)での"メディエーションズ・ビエンナーレ"(2010年9月10日から10月30日までポズナン国立美術館他にて開催)と広島市現代美術館(2010年7月19日から11月7日まで)にて、それぞれの場所に距離を超えてつながる"ペア作品"を1点づつ展示するプロジェクトを行っています。主な個展に宮城県立美術館(2000年)、ゲント市立現代美術館(2001年、ベルギー)、テンスタ・クンストハーレ(2004 年、スウェーデン)、高梁市成羽美術館(2009年、岡山)などがある。シュウゴアーツでは3年ぶりの個展となる。
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