熊谷晃太の作品は、その優しいタッチであなたを彼の世界に招き入れてくれます。
「さあどうぞ、」
やわらかい輪郭をもった"いきもの"がゆったりといきている絵の中では、彼らが静かに対話しているようです。
「はるばるご苦労ですね、」
あなたも、このベンチに、このしろくまの背中に座って、ひそひそ声で話すのです。
「暑さでばててないですか、」
緊張していても、すぐに打ちとけられますよ。
「そうですねぇ、」
仲良くなったら、一緒にスモウで遊びましょうか。
熊谷晃太は、身近にある画材の紙、クレヨンを中心に平面作品以外にも、立体、壁画など幅広い制作をしています。
近年はポールペンのみを使った創作によって独自の表現を醸し出しています。
その技法を使った、カエルとカラスが土俵入りの「雲竜型」「不知火型」を決めている対の作品は、十和田市現代美術館の企画展で発表されました。
クレヨンの質感をもつ色調。地の部分をあえてゆったりとった構図。そこには優しい顔をした動物たちが横たわっていたり、座っていたりします。もちろん、人間も参加します。
昼なのか夜なのか判然としない画面の中には永遠の、極めてゆっくりとした時間が流れているようです。幼い頃に見たお気に入りの絵本の主人公とお喋りしているような気持ちにさせてくれます。
ややもするとメランコリックであるようにも感じられる彼の作品は、そのメランコリーの混合ゆえにより優しく、そして彼独特の世界観を打ち出している、ずっと見ていたい作品たちです。
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