展覧会の為のステイトメント
都市の生活の中で飛び交う情報や社会の変化、まるで即興で音楽を演奏しているような、または嘘の上塗りを続けているような瞬間瞬間の衝動的な現象の断片的な出来事の蓄積を、描くことによってのみ現在というものを手の中につかむチャンスが与えられるような気がします。しかしいざ描き始めると日常の蓄積も過去の歴史も未来の計画もすべてファンタジーであり、等価値であり、単純化され「原始的な現在」を構築していくのです。
- 池添彰 -
池添 彰は1979年高知県生まれ、多摩美術大学絵画学科版画専攻卒業。2006年のGEISAI#10において小山登美夫ギャラリー賞及び成山画廊賞を同時受賞、一躍注目を浴びた現在活躍中の若手アーティストです。裸体の人物や原始的な植物、様々な動物達など、主に神話から題材を得たと言う有機的なイメージを多用する彼の作品のスタイルは連環と欠落、有り得ない永遠とはかない現実を見るものの前に静かに突きつけ、「絵画の終焉」論以降の新たな世代の絵画の可能性を多分に秘めています。
彼の作品の中では人間は特別な存在ではなく、他のモチーフと全て等価として描かれています。彼は今回の作品に関して、「いろいろな境界や輪廻のような円環を何度も何度も通る人々を描いたり、内側と外側の両方向の意識から物事をとらえる視点を試みました。すなわち今回の展覧会のタイトル『Repeater / リピーター』は同じ行動を繰り返す人、または何度も同じ場所に来る人から生まれたものです。」と言っています。この言葉が、彼が今後も人間を等価として描いていくためのものなのか、それとも新しい次のステップとしてのものなのか、そして実際の作品を観る事で解き明かす事が出来るのかどうか、期待を持って皆さんに楽しんでいただける展覧会になることでしょう。
今回の展示は日本での初個展となり、油彩、水彩、写真、及び立体のそれぞれ数点ずつで構成されます。
この秋、渡米する池添彰の大きな節目となるこの展覧会。
お忙しいとは存じますがぜひご高覧下さいます様、心よりお願い申し上げます。
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