横尾忠則は、1936年兵庫県西脇市に生まれました。幼少の頃から絵画の模写に興味を持ち、高校時代には、地元の商店街や商工会議所のポスターを制作するなど、早くから美術やデザインに対する才能を開花させます。
1960年、日本デザインセンターに入社し、制作の拠点を東京に移すと、その活動の幅はさらに広がりをみせ、独特なイラストとデザイン感覚にあふれる、《腰巻お仙》をはじめとする劇団状況劇場のポスターなどで、たちまち若い世代の支持を集め、大衆文化を代表する寵児となりました。
その後、グラフィック・デザイナーとしての仕事は、ポスターからイラストレーション、ブックデザインなど、さまざまな印刷メディアへと展開し、さらに版画や絵画、映画といった芸術分野にまで広がっていきました。
それら全ての分野における個々の仕事が、その後半世紀を経た今日に至るまで、常に時代の先端的なイメージの創出と、独自の斬新な想像力に満ちあふれたものであったことは、その間の活動の足跡が示すとおりです。
今回の展覧会は、このように広範囲にわたる横尾の仕事の中でも、その出発点であり、また、常に彼の創作活動の中心にあったポスターに焦点をあてるもので、横尾が初めてポスターを手がけた1950年代から、現在に至るまでの、約60年間に制作された全ポスター約800点を一堂に展示する画期的な個展です。
当館では、この10年あまり、横尾の全ポスターを、一部購入を含め、同氏からの大量の寄贈により収蔵し、折に触れ、常設展示や他館の展覧会への貸し出し等により、部分的に紹介してきましたが、その全貌をご覧いただく機会を持つことはできませんでした。
本展は、横尾忠則がこれまで制作した全ポスターに加え、下絵、版下等の資料も展示することで、同氏のデザイナーとしての活動の全体像を観覧いただく絶好の機会となることでしょう。
横尾忠則 《都市とデザイン》(鹿島研究所出版会) 1965年 シルクスクリーン・紙
国立国際美術館蔵 ©TADANORI YOKOO
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