「日本を再定義する」を2010 年のテーマに据えた森美術館は、「ネイチャー・センス展:吉岡徳仁、篠田太郎、栗林 隆」を開催します。
「自然」という言葉は、もともとあった「あるがままのさま」を意味する「自然(じねん)」に加え、明治期になって西洋から輸入された「Nature」の訳語としても使われるようになりました。この後者の意味においても、日本の自然観は、いわゆる人工に対する野生や原生林、都市に対する田舎や田園に留まらず、ひろく森羅万象、天地万物などを含む宇宙観とも連続しています。それは、四季の変化が明らかな日本の気候風土、古来のアニミズムや自然崇拝から派生した宗教観とも関連し、独自に育まれて来た自然観といえるでしょう。
「ネイチャー・センス展」では、現代を生きる日本人の感性や文化的記憶と自然観との関係性を、国際的に活躍する吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆の3名のデザイナー/ アーティストのインスタレーションを通して考えます。彼らはいずれも、自然現象や人間と自然の関係性をその表現に採用していますが、その捉え方は、より感覚的、空間的な知覚によるものです。
篠田太郎
《銀河》
ミクスト・メディア
2010年
80×750(直径)cm
撮影:高山幸三
写真提供:森美術館
空間を大胆に使ったインスタレーションは、鑑賞者にとっても、アーティストの感性をそのまま体感し、知覚のレベルで共有できる機会となるでしょう。また、展示の最後には、アカデミーヒルズ六本木ライブラリーと恊働で、約600 冊の本を通して日本の自然観を考える「ネイチャー・ブックラウンジ」を設けました。展示とあわせてご活用いただくことで、自然観についての考察がより深まることと期待しています。
ともすればモダニズムに置き去りにされてきた、いわば超自然的な感性や空間に存在するエネルギーやバイブレーションが、私たちの無意識の領域から本展を通して喚び起こされることで、「日本の再定義」だけでなく東アジアの文化的遺伝子を再考する機会にもしたいと考えています。
栗林 隆
《インゼルン 2010(島々2010)》 部分
2010年
黒土、鹿沼土、植物、アクリル
約400x750x1000cm
撮影:渡邉 修
写真提供:森美術館
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