キドプレスでは、このたび重野克明の原画を特別展示いたします。
今回展示される作品は2010年8月に幻冬舎より発刊された小説、「夜にはずっと深い夜を」/鳥居みゆき著の挿絵のために制作されたものです。
重野克明は1975年千葉県に生まれ、2001年東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業後、2003年には同大学院を版画科専攻で修了しました。
大学を出た後は、作家として銅版画、油彩、ドローイングなどさまざまな平面媒体を中心に制作を続け、これまで多くの作品を精力的に発表して参りました。
2008年にはキドプレスでの初個展「いつもあこがれ。longing everyday」を開催。
プリンターとのコラボレーションで自身初のリトグラフを制作・発表し、「より作品や自分自身を客観的に見つめる事ができた。」と、新たな可能性を広げました。
作品中には一貫して「哀愁」「エロス」「ヒューマニズム」といった人間の情念のようなテーマが描かれています。
言葉では言い表し難い、たくさんの感情の起伏が、豊かな感性と、類い稀な表現力で、美しく作品に投影されていきます。
そして作品にはどことなく「心地のよい古臭さ」が漂っています。
今日、真新しい表現媒体にとらわれた、儚げな現代美術作品が多くみられる中、そんな風潮に逆行するかのように、重野は古典から多くを学び、日々「描く」という行為を淡々と続けてきた作家の一人です。
そんな彼にこそ表すことのできる、誤摩化しのない実直な精神性を感じ取って頂けるに違いありません。
その重野が今回、装丁デザインナー鈴木成一氏の呼びかけにより、小説の挿絵に挑みました。
紙に水彩や墨、インク、コンテ、鉛筆などで20点以上が制作され、クオリティーの高い詩画集の様な小説が完成いたしました。
著者の鳥居みゆきは、独特な不条理世界を演じるコントで異彩を放つお笑い芸人ですが、その秘められた文才によって執筆家としても鮮烈なデビューを遂げました。
そんな彼女の妄想日記に、より深い魅力与えたのが重野克明の描く世界であったことは、言うまでもありません。
今回が本邦初公開となる原画展です。この機会に、是非ご高覧いただきますようお願い申し上げます。
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