この度、東京画廊 + BTAPは杉山功個展『神居 SANTUARIO』を開催いたします。作家にとって国内で20年ぶりの個展となる本展では、1990年代から今日に至るまでに制作された彫刻作品を、複数展示いたします。
杉山功は1977年に東京造形大学彫刻科を卒業後、同大学研究室へ進学。1983年、卒業と同時にイタリアへと渡り、カラーラ美術アカデミーに入学します。卒業後はイタリアに留まり、ミラノ、カラーラを拠点に制作活動を行ってきました。これまで主にヨーロッパで個展を開催し、世界各地のグループ展やアートフェアで作品を発表しています。
杉山の彫刻は大理石と木から成ります。未加工の大理石を自然に見立て、そこに家のフォルムを配置することで、文明の存在をほのめかすのです。ゆっくりと風化していく石と、早々と朽ちて消える木の対比によって、自然の時間と文明の時間の異なるリズムが喚起されます。このような光景を俯瞰する作家あるいは我々の視点は、世界の全体を捉えようとする宗教的なビジョンとも言えるのです。
イタリアに在住する杉山は、古典古代から現代に至る西洋の彫刻文化の長い伝統を、精力的に吸収しつつ、制作を行ってきました。それはまた、数々の傑作を前に、自身の文化的根源を問うことでもあったと言います。しかし、杉山はこの問いを自分のアイデンティティにしがみついて解決しようとはしません。西洋対東洋という対立は、彫刻のフォルムの純粋性を追求することで、昇華されるのです。こうして実現するのは、一つの文明や宗教に囚われない、超然とした世界観です。それは一見、私たち日本人に親しみ深い構造を示しながらも、どこか異国的で神秘的な雰囲気を漂わせます。しかし、この枠組みを転倒し、陰陽を逆転させて読むこともできるはずです。つまり、杉山の作品を構成する均整のとれた空間は、彼が身を置いている西洋美術の文脈の象徴となるでしょう。そしてそこに現れるのは、東洋の幻影を宿した「神居SANTUARIO」に他ならないのです。
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