川上の制作プロセスは、雑誌の切り抜きや写真をパソコン内でコラージュすることから始まります。そこでつくりあげられたイメージを、インクジェットプリンターが画像を少しずつ出力していくが如く、細長い帯状に分割し一列ずつ順番に描き出すという手法をとっています。縦に分割した細長いパネルに、一方方向で順番に描き出すという手法をとっています。
川上は大学在学中に、リアルなピカソ、リアルなベーコンを見てみたい、そして自分でつくってみたいと考えた経験から、人体をモチーフに極端なデフォルメを加えた作品を制作し始めました。
それは19世紀以降の近代絵画がつくりあげた「見たものを感じたままに描く」というスタイルを、パソコンで簡単に合成、モーフィングができる現代ならではの技術をもって再検証、再解釈するという試みでもあります。
おぞましくも感覚的にはリアルな人体表現を、その主題にそぐわないクールでシステマティックな手法で描く行為。それは主題となる欲望を巧妙に抑制し、画面のなかに封じ込める作業でもあります。そのように描き出された欲望はより強く、鑑賞者の深層心理に訴えかけるものとなります。
CGやSFX技術などが急激な発展を遂げた現在では、現実に実在しない、また人間が今まで見たこともないものが、きわめてリアルに仮想空間のなかで実在しています。そのような時代のなかで、絵画を通して私たちが感じる肉体表現におけるリアリティーとは何なのか?川上雅史は、このような問いを投げかけているのです。
今回のTARO NASUでの初個展では、約40cmサイズのモノクロで描かれたペインティング十数点の展示を予定。
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