桝本佳子の陶芸作品が最初にあたえる印象は、意外性、驚きといったものでしょう。中央を松の木に貫通された壷、「松/壷」。一見すると普通の飾り壷、反対側からみると白鷺をかたどった彫刻の「白鷺/壷」。壷ふたつを繋ぐようにして吊橋がかけられた「橋/壷」。これらの作品がもつダイナミックさとユーモアは、「器と装飾の、主と従という関係を壊す」という桝本の試みによって生み出されています。普段は装飾として、器という輪郭、あるいは額縁のなかにおさめられているモチーフは解き放たれ、輪郭を飛び越えます。器からはその用途、習慣性が剥奪されますが、器であることは変わりなく、そこに存在しつづけています。つまり器とモチーフは1:1の関係であり、ある種の緊張感をもって存在しあっているのです。
桝本は幼少より茶道に親しみ、様々な道具がある一方で、用途のない工芸品が多く存在することに興味をもったと言います。「飾るだけなのであれば、もはや器の形をしている必要は無い」。歴史のなかでできあがったカテゴリーを可視化させるような彼女の作品は、それを成立させるための技術によってこそ可能になり、人を立ち止まらせるような存在感を放つのです。
小山登美夫ギャラリーはこの度、若手アーティストの作品を紹介する「TKG Projects」を開始いたします。本展はその第一回目となる展覧会です。
桝本佳子の新しい「圧縮紋様」のシリーズを含む、新作6、7点を展示いたします。この機会に是非ご高覧下さい。
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