柴田は東京藝術大学在学中から一貫して、一見するとオーソドックスともいえるモノクロームの抽象絵画を制作してきました。それは微妙な色彩によって画面構成され、鏡面のように平滑で光沢のある表面を特徴としています。そうした絵画を実現するために試行錯誤のうえに彼が獲得した制作方法は、パネルに水張りしたアルシュ紙に油の吸収を抑えるためにニカワで下塗りし、それを支持体として限られた色数の油絵の具を流し込んで色を重ね、刷毛を用いてフラットな表面を構築するというものです。昨年の個展で発表した作品では、初めて支持体をアルシュ紙からキャンバスに替え、より大きなサイズの作品への展開を期待させました。暗褐色や暗灰色、あるいは深緑色をたたえる茫漠とした画面には、ほのかに赤や青の色彩の気配が漂い、ときにある奥行きや光、風景のようなイメージ、イリュージョンを観る者にもたらします。静謐さをたたえた美しい作品は、高い完成度、緊張感をもって観る者を魅了します。
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