奈良美智がドイツで制作を学んでいた頃、アカデミーの教師だった画家のA.R.ペンクは、彼の作品を「天使」と呼びました。奈良が描き続ける子供たちの姿には、子供ゆえの純粋さと残酷さ、孤独と、それを正面から受け止めようとするひたむきな強さがにじみ出ています。誰しもが自分の姿を重ねずにはおれない普遍的な幼いポートレートが、近代絵画から続く伝統の中で描かれるのに対して、日記のように描きとめられるドローイングでは、作家自身が日常の中で覚えるよりヴィヴィッドな感情が、時にはロックの歌詞や独り言のようなフレーズと共に次々と焼き付けられていきます。
03年から始まった、YNG(Yoshitomo Nara + graf)としてのコラボレーションでは、作家のアトリエを模した小屋などを制作しながら、作品が生まれて来る場所のオリジナルなあたたかみを、観客と共有する試みも続けています。
本展では、信楽の<滋賀県立陶芸の森>で昨年2月から滞在制作された、陶器の立体作品を中心に展示いたします。これまで木彫やFRPでの立体制作を主としてきた作家が、1年以上取り組んで来た新たな試みで、陶器作品をシリーズとして公開するのは、本展が初めてです。
大小取り混ぜた様々な立体と、ドローイングも組み合わせて展示される予定です。
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