「ラントシャフト」は、弊社が六本木コンプレックス時代から連続して開催している、風景をテーマとしたグループ展です。
2008年に開催された内海聖史、桑島秀樹らの「IV」より、2年ぶりの開催です。この展覧会は、単なる風景画を集め並べたタイプの風景展とは異なり、作家が見ている風景の先に生み出される作品、 またそれを介して風景を味わっていただくという目論見のもと、企画されています。そこにみる風景は我々の日常の風景をより研ぎすまされたものかもしれません。 これまでも「ラントシャフト」では長塚秀人や忽那光一郎といった、優れた風景写 真のアーティストをフィーチャーしてきましたが、今回は出展の3組が全員写 真作品を発表します。 また、いずれのアーティストも何がしかの形で欧州との関係性の中で制作している、という共通 項を持っています。
スペインに生まれ、金融ディーラーという異色の経歴をもつ、川久保ジョイ。タグボートアワードの常連作家です。ラディウムでは初めての展示です。現実性を維持しながら、ちょっと集中すると、内側に引きずり込まれてしまうような独特の幻想的な風景を作り出す彼の写 真は、フレームがまるで別の次元への窓となっているかのような感覚をおぼえます。 通常のタテヨコ比のカラー写真がなじみ深い彼の作品群ですが、「ラントシャフト」では密かに撮りためていたモノクロのパノラマサイズの作品を発表します。同時期に新宿眼科画廊でもグループ展に参加する事が予定されています。
地図や切手といった、なじみ深い印刷物に精緻な細工を施し、昨年の「メークリヒカイト」でレントゲンデビュー、作品も完売となった高田安規子・政子。世田谷美術館内のギャラリーでの堂々とした展示や、メークリヒカイト後、急遽決定した水戸芸術館におけるクリテリオムにおいても、優れた作品を発表しました。 彼女達の写真作品はあまり知られていませんが、イギリス滞在中に制作されたいくつかの作品は、かつてギャラリーサイド2のグループ展にも展示がなされました。日常の中では意識できない隠された風景の露呈ともいうべき彼女達の独特のウィットがこめられたこのシリーズは、クスッと笑ってしまっても、そこにちょっと背中が寒くなるような背中合わせの感覚を持ち合わせています。
レントゲンでのデビューとなるもう一人の写真家、吉岡さとる。徹底して研究施設をモチーフに、インダストリアルな風景を切り出すアーティストです。映画化もなされたダン・ブラウンのベストセラー小説「天使と悪魔」の舞台ともなったスイスのCERNの最深部にまで入り込んだシリーズでは、 ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィー誌の2008年度ベスト科学写 真家に選ばれました。 彼の軽々としたフットワークを示すようなフレーミングは、研究施設の持つクールな表面 に隠れた荒々しさや、実はメカニズムがその裏にそっと隠している温かみといったようなものを引きずり出してきます。先般 長期滞在していたニューヨークより帰国、現在は高知をベースに制作活動をしています。
「ラントシャフト」の目論見通り、独特の視点の先にある独特の風景が三者三様に切り出される、
ユニークな写真展 となることでしょう。是非、ご期待下さい。
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