不在の原型を対象化物として、立体的、平面的に分節化して認識するに至る前段階として、彫刻でも絵画でもない両性的なレリーフ状態として出発している。両性的とは彫刻的要素も絵画的要素も未分化のまま混在している状態を指し、変容、離脱のエネルギーを内包している。それはまた、人が自然にとって本質的な他者であることを告げられる以前のことであり、人はまだ世界に内接している。
戸谷成雄 (第1回所沢ビエンナーレ美術展"引込線" カタログテキストより)
シュウゴアーツでは戸谷成雄の新作個展"ミニマルバロックVI" を開催いたします。近年、戸谷の木彫作品はチェーンソーで刻みつけられる線状の窪み、それらが重なり合うことによって作り出される無数の襞をもっています。この襞の構造によって内部と外部が浸透しあいながら形成される、多くのものが錯綜し合いながら形作るその構造を「森」と呼んできました。今回の個展の作品では彫刻的、絵画的要素の両方を含む原初的な芸術の形態であるレリーフから彫刻への変容が試みられています。直立する高さ2m、横幅1.3mの直方体の前面に刻みこまれている「森」の風景、そしてそれを背面で支える人のような塊。「洞穴体 2010」と名づけられたその作品では、「森」の風景の中に潜む「穴」と人の耳の「穴」が作品を貫通し接続されています。風景を見ることを通してその声を聴く、つまりそこでは視聴覚が未だ同義をなしています。レリーフと彫刻、視覚と聴覚がまだ未分化の状態を保っている"両性的なもの"にこそ戸谷は可能性を見出しているのです。本展では4点1組の大型作品、そしてそれらに関係するドローイングなどを展示する予定です。2006年より取り組んでいる"ミニマルバロック"シリーズの第6弾、是非ご覧ください。
SHUGOARTS
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