小林孝亘は1960年東京に生まれ、1986年に愛知県立芸術大学を卒業しました。80年代から90年代前半にかけて、自己防衛の手段として外界との接触や関係を断つ自身の姿を投影した潜水艦をモチーフに、大胆な筆触と重厚な絵の具使いで画面を構築する作品を制作し、その後1995年に水戸芸術館で開催された「絵画考'95」において、木漏れ日に包まれる公園の水飲み場や犬を描いた油彩を発表して高い評価を得ました。1996年に西村画廊で第1回個展、同年、VOCA展で奨励賞を受賞、97年文化庁芸術家在外研修員としてバンコクに滞在、2002年より、バンコクと東京の2都市で制作活動を行っています。
タイでの日常生活から食器や車のテールランプなどの題材を見いだし、それと同時に光を巧みに用いた独自のスタイルを確立して賞賛されました。その後小林は、「Small Death-小さな死」や日光浴をする人を描いた「Sunbather」など、人物を新たなモチーフに選ぶことで更なる展開を見せます。2004年には目黒区美術館で個展「小林孝亘―終わらない夏」を開催、また2006年の西村画廊での個展では、人物の顔をクローズアップで描いた「Portrait」を発表して新たな境地を切り開き、近年では森のなかで変遷する光と人物をドラマチックに描き上げその評価が一層高まっています。
最近は日本の現代美術を代表する作家として多くのグループ展に出品、2007年「開館記念<生きる>展 現代作家9人のリアリティ」横須賀美術館、東京ステーションギャラリー企画の『現代日本の展望』展、2008~2010年「ネオテニー・ジャパン-高橋コレクション」霧島アートの森、他を巡回中、 2009年「放課後のはらっぱ-櫃田伸也とその教え子たち」愛知県美術館、「目をとじて-見ることの現在」茨城県近代美術館など、幅広い活躍をしています。
そして今年は、1月16日から4月4日まで国立国際美術館で現在開催されている、「絵画の庭-ゼロ年代日本の地平から」に出品中の他、
9月から12月にかけて、名古屋を皮切りに、東京、大阪の高島屋を巡回する「第三の絵画・現代日本絵画の展望」(仮)にも出品をします。
この度の展覧会では、それぞれに異なるモチーフの新作10点の作品を発表します。
上方から差し込む厳かな雰囲気をもつ光に包まれた寝袋で眠る人物を描いた「Sleeping Bag (green)」、「Sleeping Bag (blue)」では、これまでの絵画史上に見られなかったと言っても過言ではない、全く新しい人物像を描くことに成功をし、具象画の分野に新しい境地を開拓する意欲的な作品となっています。
また、激しく燃え上がる炎の中から発せられる静を帯びた光を描いた「Sitting Fire」、葡萄を照らす包み込むような温かみを持つおだやかな光「Vineyard」、にごりのない水面に吸収されるように差し込む強い光「Boat」など、今までにないモチーフにも目が向けられ、更に光が敏感に感じ取られている新作を展示します。
小林の心を捉えた物を無駄な部分を排除したシンプルな形と大胆な構図で描かれながらも、作品の奥からはその場の空気感がリアリティーをもって伝わり、小林が一貫して追い求め続ける、感じた「何か」が画面の上で様々な題材を通して忠実に再現されます。
小林のテーマである独自の「光」の新たな展開がみられる新作にどうぞご期待下さい。
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