松本は、実験的なサウンドと神秘的な想像物を組み合わせた、手書きによるアニメーション映像を作る作家として知られています。制作にあたっては、まずB5紙を32分割して、それぞれを1コマとしてドローイングを描きます。そして、そのドローイングを撮影し、拡大してから1巻のビデオに仕上げます。その結果完成したアニメーションには、独立した線とランダムに描かれたオリジナルドローイングの視覚的ノイズが顕著となり、イメージの連続を伝えるのと同様に、情報の歪曲ともなっています。
今展で初公開となる作品「終わりを照らすもの1」は、長編アニメーション作品の第一部冒頭にあたります。「終わりを照らすもの」は、ゼロ地点と、それ以前と以降を含む約80分にわたる大作アニメーションになる予定で、今回ご紹介する第一部はそのゼロ地点に向かっての出発のお話しです。幻想的で、直線的でない時間軸のトランスのように瞑想的なアニメーションの物語に登場するのは、宇宙の反対側から地球上の「ゼロイベント」を目撃するために私たちの銀河宇宙太陽系へとやってきたアリ型の宇宙船です。続く物語には、意識のない少年と巨大なロボット、そして何世紀にもわたってお互いを探し続けているマーメイドのペアです。この作品は、知覚するものと現実、個人とコミュニティ、内と外などの関係について考察しています。
これまでの作品とは異なり、「終わりを照らすもの1」は通常作家がアニメーション制作にとりかかる前の習作としている大型のドローイングも映像に取り込んでおり、それが作品の均衡を微妙に乱し、変化を与えています。これらのドローイングもギャラリースペースにてご覧いただけます。また、鑑賞者が実際に手にとって観ることができる、宇宙を内観するような立体作品も同時に展示いたします。
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