山下清(1922-1971)といえば、昭和の国民的画家であり、誰もが彼の色鮮やかな貼絵の世界を思い起こすでしょう。その緻密に張り込まれた色紙の一葉一葉には、四季折々の風景の光、音、香り、そして人々の感情が息づいています。山下の自然体から生まれる素朴さは、今なお私たちの心を魅了して止まず、その既存の流派や価値観に捕らわれない自由な芸術は、日本におけるアウトサイダーアートの先駆者としての評価も高まりつつあります。
本展は、山下の貼絵を始め油彩、ペン画、陶器といった様々なジャンルの作品約200点に加え、日記や写真など多数の資料を一堂に会する大展覧会です。展示は山下の画業を大まかに年代順に辿りつつ、「貼絵になった学園生活」、「色褪せぬ才能・放浪期の貼絵」、「豊かな色彩感覚が生かされた陶器」、「山下清・ヨーロッパへの旅」、「遺作・東海道五十三次」など15のテーマに分けて詳しく紹介します。作品に彼自身が残した文章やエピソードを添えることによって、激動の昭和を生きた山下の人間像と数奇な人生を、物語風に楽しめます。なかでも、山下が昭和30年代に4度訪れた長崎との関連については、特別コーナー「山下清、長崎をぶらりぶらり」を設けます。『長崎三部作』を特別展示するだけでなく、当時の写真や新聞記事から山下の足跡や市民の反応を紹介することで、現代の皆様に人間・山下清を親しみを持って体験していただきたいと思います。さらに、貼絵の保存修復の過程についても写真資料を交えて展示し、脆弱な媒体によって制作された貼絵芸術を現代に鮮やかに甦らせる、知られざる努力の一端を紹介いたします。
山下清《グラバー邸》 貼絵/1956(昭和31)年(個人蔵)
〒850-0862 長崎県長崎市出島町2-1
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