小川芋銭は、近代の日本画が大きな変革を迫られた時代にあって、大正から昭和初期にかけて独特の水墨表現による作品を制作して高く評価された、近代日本画において特異な位置を占める画家です。独学で和漢洋の学を修め、書・俳諧でも一家をなした近代の文人画家とも言われ、農村・山水風景や河童を主題に脱俗奔放な水墨画を多く残しました。
小川芋銭《水魅戯》1923年 茨城県近代美術館
初期には画塾彰技堂で洋画家本多錦吉郎に画技を学び、また農事の傍ら新聞雑誌に時事漫画を載せ、幸徳秋水の平民新聞や国民新聞などにも漫画や挿絵を掲載しています。小杉未醒との親交から漫画集『草汁漫画』を刊行し、同時に俳諧への関心の深まりから正岡子規を訪ねるなどして投句を重ねると共に『ホトトギス』には表紙や挿絵を描きました。1915年平福百穂・川端龍子らと日本画の小団体「珊瑚会」を発会し日本画家として独自の作品を発表し、その独特の芸術表現から高い評価を受けました。自然の水魅山妖と交感し、また田野における農民の労働や田園の情景を写しながら、自然や風土とひそかに語らいつつ培った豊かなイメージを作品に表しました。
平福百穂《田舎嫁入》1899年 東京藝術大学大学美術館
この展覧会は、小川芋銭の歩んだ画業を縦糸に、青年期から晩年までの名品によって辿りながら、平福百穂、森田恒友などの珊瑚会の画家たちの仕事を横糸に、芋銭の生きた時代の息吹を伝えようとするものです。
近藤浩一路《墨堤花雨》(部分)1918年 山梨県立美術館
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