4月のTARO NASUは、今、ロンドンで最も勢いのある画廊の一つとされるHerald Stの作家6 人に焦点をあてたグループ展を開催します。
6人に共通するのはその姿勢です。アートを、ホワイトキューブの聖域で日常と切り離して考えるのではなく、むしろ積極的に日常生活との接点を主張しながら、なおかつアートのアートたる所以とその存在意義を模索すること。
時には誇張された現世肯定のジェスチャーを用いて、また時には諷刺をこめて展開していく彼 らの表現力は、同時に美術の長い歴史を意識的に背負うことに対する自負によって支えられて います。
今回ご紹介する6人は以下のとおりです。(アルファベット順)
Peter Coffin
1972年アメリカ生まれ。今回ご紹介する作家のなかでは唯一、米国出身のCoffinは、彫刻、写真など多彩な媒体を駆使したウィットに富む作品群で国際的な評価を確立している。アーティストのみならず建築家など多ジャンルのクリエイションとの共同制作でもその才能を発揮しており、自らのフィールドをさらに拡大している。
Matthew Darbyshire
1977年イギリス生まれ。2009年のヘイワードギャラリープロジェクトスペースの個展「Fun House」では、消費社会の現在進行形をカラフルな色彩感覚で作品化したインスタレーションで 脚光を浴びた。
過剰なまでの物神崇拝的な表現の背後に潜む、アートに対する本質的な問いかけは最新作の巨大インスタレーション(壁画プロジェクト)でも健在。
Cary Kwok
1975年香港生まれ。ファッションの勉強のためイギリスのCentral St.Martinに留学後、イギリスにて作家活動を開始、現在に至る。
印象的な細密描写ドローイングのペン画を特徴とするKwokは、官能と笑いという二つの強力な誘惑を画面の中で巧みに融合させる手腕にその個性が光る。ゲイカルチャー、ヘアスタイル、靴といった特定のモチーフに執着を示すその作品は、人間社会を支えるプロトコルとその背後 に潜む欲望をテーマにとりあげている。
Djordje Ozbolt
弊画廊での3回目の展示となるDjordje Ozboltは1967年旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国生まれ。しばしば「ダークロマンティシズム」と評される彼の作品は、古今東西の美術史的引用と自らの奔放なイマジネーションを重ねて織り出されたいわば「イメージの織物」といえよう。ジョルジュ・デ・キリコに私淑していると語る通り、そこには現代ならではのシュール レアリスティックなイメージが展開されている。
Nick Relph
1979年イギリス生まれ。1990年代末から、オリバー・ペインと共同制作を開始する。身近な若者文化をモチーフにしつつも、若者文化という固定概念を越えた普遍的なイメージを模索する作風で評価を受ける。2003年には第50回ヴェネチアビエンナーレ若手作家部門金獅子賞を受賞。2008年には横浜トリエンナーレにも参加。近年、独立して制作を開始。
Donald Urquhart
1963年イギリス生まれ。往年のハリウッド映画の名場面や有名なポスター等を引用したモノクロのドローイングを特徴とする。不安や恐怖、戦争や狂気といった現代社会の精神史の闇を辛辣なユーモアとコミカルな表現によって描き出す。
Matthew Darbyshire "Untitled, Furniture Island No.6"
Cary Kwok "Desire- Delhi (1800s)"
〒101-0031 東京都千代田区東神田 1-2-11
TEL: 03-5856-5713