エリカ・ヴェルズッティは、1971年サンパウロ生まれ。現在もサンパウロを拠点に制作活動を行っています。サンパウロの大学を卒業した後、ロンドンのゴールドスミスにてアートを学びました。
主な個展にGalleria Fortes VillacaFortes で開催された「Pet Cemetery」(2008)などがあります。また日本では、2008年に東京都現代美術館で開催され広島市現代美術館へ巡回した「ネオトロピカリア:ブラジルのブラジルの創造に参加の他、東京ワンダーサイト本郷で開催された「Haptic-触覚 ヴィック・ムニーズキュレーションによるブラジル・日本アーティスト」展のため東京に滞在するなど国内の美術館でも何度か紹介されています。MISAKO & ROSENでは、昨年の2009年に開催した二人展「エリカ・ヴェルズッティ/ティアゴ・カルネイロ・ダ・クンニャ」展で紹介されています。
現在、バッカーズ・ファンデーションの助成により AIT主催のレジデンスプログラムのため東京に3ヶ月滞在中です。5月22日からは、同じくAIT(アートイニシアティブトウキョウ)のレジデンスに滞在中のプラディープ・ミシュラと共に二人展をGallery Side 2にて開催します。
エリカ・ヴェルズッティは、彫刻、絵画、ドローイングをなど様々な表現手法で作品を制作しています。代表的な作品である彫刻はブロンズや粘土といった古典的な素材を使います。彫刻の多くには野菜やフルーツの形が使われているように、どこかで観た事のある形、物を使用して、観た事のない形を作り出しています。
日本で初めてとなる今回の個展では、新作ペインティングを発表いたします。この機会にどうぞご高覧下さい。
新作について、ヴェルズッティはこう語ります:
フレームのない、絵画におもねることのないドローイング。
素材の魅力について実験するために、これらの作品に対する最初のモチベーションとなった素材である「木」を表面として選択すること。
他の国では手に入らない様々な色の、日本製のユニークでマットなアクリル絵の具のチューブ、マジック、鉛筆、消しゴム、鉛筆削り、わたしには読めないラベルが貼られた日曜大工用のミステリアスなペンキ、スプレー、黒板用の絵具たちが、アトリエで楽しげに選び取られるのを待っている。
わたしがしたいのはひとつひとつの板の上に「フリースタイルの」ドローイング的絵画を作りだすために、地形を描き出していくことーそれは多分フリースタイル の格闘技とか、水泳のフリースタイルとかいったもののように、いくつかの伝統的な方法に従いつつも、それらを混ぜ合わせることなのだと思う。
ボールペンというものは、板に物理的にぴったりと吸い付いていくその習性のために、彫るとか彫り刻むとかいったことに対するめくるめくようなヒントをわたしにもたらしつつ、特別な役割を果たしてくれる。子供の頃、落書きが禁じられているのに、こっそりと学校の木製の机に自分の名前と好きな子の名前をハートで飾って彫り込んだりしたものだった。いつか自分独自のものを生み出すために、今すでに知られているありとあらゆる表現技法を享受したいと思っているわたしという作家にとって、ボールペンは重大な手掛かりだ。
こうやってわたしは、初心者特有のやる気だとか、その熱狂ぶり、知り始めの新鮮さや幸運さといったものを取り戻すために、繰り返し素材と向き合う。
最新の彫刻作品では野菜片を構成要素として用いた。
フルーツや野菜の形から親近感を得て、その中身にまで迫っているー例えばスターフルーツの切り口を星に、ジャックフルーツの伝統的な切り方を直方体に見立てる、というように。
今回MISAKO & ROSENで発表する作品群の中では、こういった形がドローイングの中のスペースを気ままに区切ったり形作ったりしているのが見えるだろう。
家から遠く離れた工場と、ヨックモックカフェの上にあるアトリエに隠れながら、それゆえに知覚を制限してしまう日々の習慣からは遠く離れ、わたしはキッチンで実験にふける。
これらの木片はその産物である。
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