1659年(万治2)のヨーロッパへの輸出開始から約100年間に、多くの伊万里磁器が海を越えました。輸出が始まった初期の時代から、柿右衛門様式と呼ばれる優美な色絵磁器の時代へ、そして豪華絢爛で大作が多く作られた金襴手へと、100年の間に古伊万里もその様相を大きく変えていきました。
今回の展覧会では165点の作品によって、100年間に古伊万里がたどった大きな流れを感じていただきましょう。それを通してヨーロッパの人々がどのように古伊万里を愛したのかをご覧いただきます。
色絵桜樹風景文大皿 1690~1730年代
©USUI COLLECTION
今回の展覧会はフランス・パリに在住し、ヨーロッパの古伊万里を収集された碓井文夫氏のコレクションの日本で初めての公開となるものです。ここで、USUI COLLECTION の魅力を簡単にご紹介いたしましょう。
ヨーロッパの各地には、古伊万里を含んだ東洋陶磁コレクションがいくつもあります。ドイツ・シャルロッテンブルク宮殿の「磁器の間」、あるいはイギリスのバーリー・ハウスなどがその代表です。 オランダ、イギリス、フランスやドイツなどにあるコレクションは、国によって古伊万里の入ってくる時期や流行の違い、受け入れた人々の階層の違いなどから、どうしても偏りがでてきます。このため一つのコレクションでヨーロッパに渡った古伊万里の全体像を明らかにするのは難しいものでした。
それに対してUSUI COLLECTIONでは、ヨーロッパで愛された古伊万里の全体像を伝えることを目的のひとつとして収集が行なわれてきたのでした。USUI COLLECTIONには、柿右衛門様式や金襴手の優品があり、金襴手に蒔絵装飾を施した逸品も含まれています。その一方で、輸出の初期にヨーロッパに渡った日本国内向けの染付の皿や、日本を代表する名窯柿右衛門窯で、色絵の影に隠れがちな染付の名品などもしっかりと含まれているのです。
ヨーロッパが愛した古伊万里の素晴らしさに感動し、ヨーロッパを魅了した古伊万里の全体像を見ることができる。それこそが日本で初めて公開されるUSUI COLLECTIONならではの魅力と言えましょう。
染付漆装飾花束菊文蓋付大壺 1690~1730年代
©USUI COLLECTION
日本で生まれた陶磁器がヨーロッパでどのように愛されたのか。今回の展覧会では、そうしたことも是非感じて欲しいことのひとつです。ここに掲げた写真は、ドイツのシャルロッテンブルク宮殿に造られた「磁器の間」です。17~18世紀には、ヨーロッパの王侯貴族の間で、東洋の磁器で飾り立てた部屋を作ることが流行していました。
作品ひとつひとつを名品としてじっくり鑑賞する、これもひとつの鑑賞のスタイルですが、ヨーロッパで愛された古伊万里は、彼の地でどのような形で使われていたのかを、少しでもお伝えしたいと考えています。
ヨーロッパ絵画の中に現われる古伊万里をパネルでご紹介し、ヨーロッパで取り付けられた金ピカの金具によって姿を一変させた古伊万里をご覧いただきます。
どのような世界ができ上がっているかは、会場でのお楽しみ。
色絵甕割人物文八角皿 1670-90年代
©USUI COLLECTION
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