有賀慎吾は、2009年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業し、現在は東京芸術大学の修士課程に在籍する、今最も注目すべき若手作家の一人です。
有賀はこれまで、自らのドローイングを基に、空間全体を使ったダイナミックなインスタレーションや、儀式めいたパフォーマンスを展開してきました。
有賀の作品の多くは黒と黄色の2色によって彩られています。この警戒を促す2色で構成された作品群は、見るものに畏怖を与えることも少なくありません。
放射性汚染から身を守るかのような黄色い保護スーツや黒いガスマスク、眉毛と髭を携え不気味な表情を浮かべる黄色い仮面。また暗闇に散布される黄色い液体や、黒い毛皮やビニールのボンテージを身にまとった人間から吐き出さる黄色い嘔吐物など。
有賀の表現は、一見すると、恐怖や嫌悪感から思わず目を背けたくなる要素で埋め尽くされています。しかし、こうした作品には、単なる悪趣味として片付けることのできないなにかが必ず含まれ、有賀がドローイングやペインティングで繰り返し描く、人体の中に縦横無尽に張り巡らされた黄色い血管や神経図などからは美しさすら覚えます。
醜さと美しさの共存。有賀がくりかえし描き続けるのは、人間存在それ自体を形成している、決して別け隔てることのできない、真逆の2つの要素なのかもしれません。
恐ろしくも見るものを魅了してやまない有賀慎吾の作品世界。是非この機会に多くの方に体験していただければと思います。
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