1951年生まれの舟越桂は、人間の繊細な感情が投影された木彫の人物像により、80年代から国際的な活躍を繰り広げてきました。これまでの活躍に加え、東京都庭園美術館のアール・デコ空間を存分に生かし切った一昨年の「夏の邸宅」展が評価され、芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門1)、毎日芸術賞を受賞したことは記憶に新しいところです。
今回の展覧会では彫刻3体とドローイング10数点を展示いたします。
凛とした、知的で思慮深い表情が印象的な裸体の女性像「森の奥の水のほとり」は、近年の「スフィンクス」シリーズにみられる、薄い緑を基調に彩色された透明感のある体に加えて、木地そのままの上に焦げ痕のような複数のドットが施された頭部や、様々な色が大胆でありながらもデリケートに絡み合う顔など、幾つもの色彩の見事な調和が特徴的です。従来にはなかったこの色使いへの試みによって、その佇まいにこれまでの作品とは異なった新しい種類の繊細さや、生々しい息遣いがうかがえます。
一方、舟越桂の作品に共通する気品や優しさをその気配に漂わせつつも、静謐さの内に激しさを秘めた、どこか苦渋や悲しみを感じさせる表情が象徴的なソファに腰掛ける人物像の新作彫刻(タイトル未定)は、汲めども尽きせぬ豊かさでみる者を魅了します。なお、この作品は久々の着衣の彫像となります。
他に、ここ数年制作をつづけている「スフィンクス」シリーズの新作を1点展示いたします。
様々な形や色彩に挑戦し進化を繰り返し、なお普遍的な「美」を感じさせる作品を発表しつづける舟越桂の、今回も新たな展開と大きな飛躍をみせる最新作にご期待ください。
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