三宅砂織は、写真やドローイングなどの平面作品を中心に制作していますが、中でもここ数年は「フォトグラム作品」に取り組み、多くの作品を発表しています。フォトグラムとは、カメラを使わずに印画紙の上に直接対象物を乗せて感光させる写真の技法です。三宅は、数枚の透明フィルムに描かれたドローイングやオブジェなどを、印画紙の上に配置して焼き付けます。作品に微妙なグラデーションが生み出され、独特の奥行きや質感が浮かび上がってきます。焼き付けの作業を行う時に、作家自身がドローイングの位置やそれぞれを乗せるタイミングなどをその都度調整しながら制作されるため、作品にはエディションはなく、すべてユニーク作品となります。
フォトグラム作品に描かれるのは、少女たちがベッドの上でする内緒話やカーテンの裏側で遊ぶ様子など、幼少期の記憶を再現したかのような夢幻的世界です。複数のフィルムを重ね合わせることで生まれる曖昧な線や強さの異なる大小の点は、星座のように瞬き、作品全体を幻想的に浮かび上がらせます。三宅は、フォトグラム作品の制作過程を、鋳型をとって製品を作る鋳造(casting)に似ていると言います。作品のイメージは常に変容しながらも、印画紙に流し込まれて、成型され定着されていきます。作家が捉えたふわふわとしたイメージを、フォトグラムという表現方法に流し込むことで、そこに漂う眩い光や空気までをも焼き付けたかのような、幻想的で浮遊感のある作品が生まれるのでしょう。
VOCA展は1994年に始まって以来、福田美蘭(1994年VOCA賞)、やなぎみわ(1999年VOCA賞)、村上隆(1994・2000年出品)、会田誠(1999年出品)、蜷川実花(2006年大原美術館賞)など国内外で活躍する作家が参加しています。今年の「VOCA展2010」で、フォトグラム作品がVOCA賞を受賞し、今後の活躍が期待される三宅砂織。本展覧会では、VOCA賞受賞後の2010年の新作を中心としたフォトグラム作品を発表いたします。尚、本展覧会会期中の2010年3月14日(日)~3月30日(月)まで、上野の森美術館にて「VOCA展2010 -新しい平面の作家たち-」が開催され、VOCA賞受賞作が展示されます。
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