「美人画」という言葉から、皆さんはどんなことを連想されるでしょうか?一瞬の表情やポーズの美しさを見事にとらえた喜多川歌麿の「大首絵」、庶民の日常をいきいきと描いた風俗図、鹿鳴館時代のファッション、あるいは歴史に名を残した女性の姿などなど......。そんな美人画の魅力を一望する展覧会が、「浮世絵 ―美人画の19世紀―」展です。
19世紀とは、江戸時代から明治時代にいたる変転の時代でした。爛熟した江戸文化が黒船来航の波にゆり動かされ、徳川幕府の滅亡後は文明開化が進み、世紀末には日清戦争に勝利、日本は世界列強の仲間入りを果たします。浮世絵の世界においては、歌麿が幕府の取り締まりで筆を折った事件のあと、歌川国貞(のちの三代歌川豊国)、渓斎英泉らが生活感ただよう作品で人気者となり、明治に入ってからは月岡芳年、豊原国周、橋本周延らがニューモードを描いた100年といえます。以上のような美人画の名手が続出した時代、それが19世紀でした。美人画を描いたのはこれらの絵師のみではありません。「東海道五拾三次」でおなじみの歌川広重も、黒目がちで鼻筋の通った、特徴ある女性像を残しています。
この展覧会では、浮世絵のすぐれたコレクションで有名な千葉市美術館から、歌麿の作品5点をふくむ美人画39点が特別出品されます。さらに、国際版画美術館の所蔵作品を厳選して紹介し、美人画の100年をたどります。総点数は約120点、たっぷりとお楽しみください。
月岡芳年「風俗三十二相 はづかしさう 明治年間むすめの風俗」
明治21年(1888) 町田市立国際版画美術館蔵
橋本周延「真美人 十四」
明治30年(1897) 町田市立国際版画美術館蔵
〒194-0013 東京都町田市原町田4-28-1(芹ヶ谷公園内)
TEL:042-726-2771