人間は五感の中でも特に視覚を重視し、目に映るものをそのまま真実として捉えがちです。しかし、見つめている対象は本当に見た通りの実体を持っているでしょうか?見誤り、見落とし、思いこみによる錯覚などは日常茶飯事です。視覚はいともたやすく私たちを欺き、混乱に陥れます。
このような視覚の構造に目をつけた画家たちは古今東西、さまざまな「だまし絵」を手がけ、見る者を欺き、楽しませてきました。視覚へ挑戦する姿勢は現代にも引き継がれ、1960年代の錯視効果を取り入れたオプ・アートや光を用いたライト・アート、70年代の写真表現を利用したスーパー・リアリズム、90年代の古典絵画を引用したパロディー作品など、見る者の視点を意識した多彩でユニークな仕掛けを表現方法に取り込んでいます。
戦後美術を主体とする高松市美術館のコレクションを中心として構成される本展は、視覚と固定化されたイメージに揺さぶりをかける作品を「トリック・アート」としてご紹介します。26人の作家が仕掛けるさまざまなトリックを通して、「見ることの不思議」と「騙される楽しさ」をあらためて体感し、お楽しみください。
立石大河亞《車内富士》
1992年 高松市美術館
【展示構成、出品作家】26作家、65作品
第一章:高松次郎、柏原えつとむ、堀内正和、伊藤利彦、小本章
第二章:ヴィクトル・ヴァザルリ、桑山タダスキー、宮脇愛子、桑原盛行、多田美波、伊藤隆康、河口龍夫、吉村益信、名和晃平
第三章:上田薫、チャック・クロース、金昌烈、佐藤正明、鴫剛、中川直人、三尾公三、三島喜美代、坂本一道
第四章:立石大河亞、福田美蘭、森村泰昌
上田薫《スプーンのゼリーB》
1974年 高松市美術館
〒514-0007 三重県津市大谷町11
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