絵師の林閬苑(生没年不詳、1770~80年頃に活動)は、いまでこそあまり知られていませんが、当時は大坂では屈指の絵師でした。閬苑は、幼い頃から絵を描き、長じては、大坂における文人画の先駆者福原五岳(ふくはらごがく)(1730~99)に学び、また、大坂を代表する文人の木村蒹葭堂(きむらけんかどう)や、京都相国寺(しょうこくじ)の高僧維明周奎(いめいしゅうけい)との交友を通じて、さまざまな絵画を学ぶ機会を得ました。
特に安永2年(1773)から安永4年(1775)にかけて、維明の招きに応じて京都へ赴き、名高い寺院に収蔵されている和漢の名画を多数実見したことは、彼の絵画制作に大きな影響を与えました。大坂へ戻ってからは、道頓堀にかかる幸橋(さいわいばし)の近くに住み、中国風の絵画を描く「唐画師」として活動しました。「筆飛将軍」と自称し、大胆な筆運びの水墨画は、独特の雰囲気を創出しています。また鮮やかな色彩の花鳥画や美人画は華麗に、そして緻密に描かれており、幅広い技法と画題に通じていたことが分かります。
今から200年あまり前の大坂で活躍した、腕利き絵師の林閬苑に注目した初めての展覧会です。
鹿図 林閬苑筆 慈雲飲光賛 江戸時代 本館蔵
蹴鞠図 林閬苑筆 江戸時代 個人蔵
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