新潟県五泉市出身の画家・阿部展也(1913-1971)は、イタリアのローマで死去するまでの約60年の生涯を、フィリピンや欧州など世界各地で過ごしました。阿部の仕事は、その活動範囲に比例するかのように、画業にとどまらない幅広いものでした。
独学で絵画を学んだ阿部は、19歳で独立美術協会展に入選します。そして「一九四〇年協会」や「創紀美術協会」、「美術文化協会」といった前衛美術グループの結成に参加したのち、弱冠三十代半ばで「日本アヴァンギャルド美術クラブ」の幹事や「日本美術家連盟」の理事に就任するなど、日本の美術界で重要なポストを担っていきます。
一方で、早くから写真制作にも着手し、瀧口修造、小石清、濱谷浩らと「前衛写真協会」を結成。フォトタイムス社の特派員を経て、戦中は日本陸軍報道部の写真班員として国外に渡るなど、アマチュアの域を超えた仕事を行っていたことはあまり知られていません。
その後、国際造形芸術連盟(IAPA)の執行委員など海外での活動が増えると、渡航先でロマネスクや東欧の建築やデザインを調査・研究し、独自の造形思考を形成しながら多くの美術批評を手掛けました。また、1962年以降定住したイタリアでは、現地の作家や美術関係者と人脈を築き、日本とイタリアの文化交流に寄与しました。
本展では、こうした阿部展也の活動の多面性に焦点を当て、当館と新潟市美術館の所蔵品を中心に、国内外の関連作家の作品とあわせて紹介します。
〒940-2083 新潟県長岡市千秋3-278-14
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