このたび刈谷市美術館では、画家として、また絵本作家として特異な活動を続ける木村昭平の創作世界を紹介する展覧会を開催します。
1949年に愛知県刈谷市に生まれた木村昭平は、1968年に高等学校を卒業すると、芸術大学に数年間に亘って受験しますがことごとく失敗、また公募展でも相次いで落選し、唯一1976年の第12回現代日本美術展で入選を果たしたのみでした。しかし、木村は屈することなく、独学によってひたむきに創作活動を続け、日本各地や海外での個展を頻繁に開催し、また1982年から91年にかけては、画家の個性と平等性を尊重する「人人展」に出品しながら独自の表現を追求しました。「私の絵は心の中にあるものを拾い続ける作業」と語る木村は、貧しくとも愛に満ちた実生活や世界の文学・宗教などから湧き上がるイメージを、大胆に極彩色を用いて画面にぎっしり描き込むといったプリミティブで幻想的な画風を築き上げて異彩を放っています。ユーモアや不気味さえも携えた作品から語られる人間の生死や愛憎、哀歓には木村の祈りが込められているようです。こうした木村の特異な表現は、人間の存在を不思議な物語で綴る絵本『ポポリン』(1985年/福武書店)をはじめ、イースター島の歴史を舞台にした絵本三部作『鳥にんげんカワカワ』(1988年/福武書店)・『大きな石のモアイ』(1989年/福武書店)・『不思議なロンゴロンゴ』(1990年/福武書店)、宮沢賢治の童話世界を絵で体現した『オッペルと象』(1991年/福武書店)などの絵本の世界でもいかんなく発揮され、不思議な物語と生命感のある奔放な画風が相まって独特な魅力を放っています。また、木村は奇妙な趣味的に、または定点観察的にさまざまなモノを拾い集める行為を長年続けており、その価値観や美意識を考察した著書『拾いの美学』(2009年、日本地域社会研究所)を本年10月に出版しました。
本展覧会では、初期から近年までの主要な絵画作品や絵本原画、版画、オブジェ、資料など約100点に加え、彼が長年にわたって拾い集めた様々なモノを用いたインスタレーションなども合わせて展示します。「拾い」を美学に昇華させようとする奇想天外な木村昭平ワールド。それは新たな価値観との出合いになることでしょう。
木村昭平《カーニバル》 1978年 豊田市美術館蔵
■アーティスト・トーク
○内容=「私の絵はΨ(波動関数)であり、拾いはリアリティーである」とする作家自身に、「描く」行為について、また独特な価値観にもとづく「拾い」の実践から美学までをじっくり語っていただきます。
○日時=2010年2月20日(土) 午後1時30分~3時頃
○講師=木村昭平氏
○会場=刈谷市美術館 2階研修室
○定員=60名 参加無料(申込不要) ※当日、直接会場にお越しください
■昭平さんとお散歩~「梁塵倶楽部」訪問
○内容=刈谷に在住し続ける作家と一緒に、美術館周辺を拾い散策しながら、別邸書斎「梁塵倶楽部」を訪問。拾い集められた驚きのコレクションの全容をご覧いただきます。
○日時=2010年2月27日(土) 午後2時~4時頃
○定員=6名
○対象=18歳以上の方
○参加無料(事前申し込みが必要です)
○申し込み方法=「往復はがき」か「Eメール」にて、プログラム名、参加者名(ふりがな)、住所、TEL、年齢を記入のうえお申し込みください。なお、「Eメール」の場合は件名を《参加申し込み「昭平さんとお散歩」》とし、「往復はがき」の場合は返信用はがきにも住所と氏名を記入してください。※定員を超えた場合は抽選とし、結果をお知らせします
○締め切り=2月14日(日)必着
○申し込み先=刈谷市美術館 〒448-0852 愛知県刈谷市住吉町4-5
Eメール=bijyutsu@city.kariya.lg.jp
※個人情報は、本プログラム開催に必要な範囲内のみで使用します
〒488-0852 愛知県刈谷市住吉町4丁目5番地
TEL:0566-23-1636