津村耕佑は、1982年に装苑賞を受賞し、1994年に三宅デザイン事務所より、自身のブランド[FINAL HOME] を立ち上げたファッションデザイナーとして広く知られています。「ディフェンス」、「サバイバル」というコンセプトを掲げたそのクリエイティヴは、これまでファッションデザインの分野だけに留まらず、「第21回現代日本美術展」(東京都現代美術館他、1992年)準大賞受賞や「身体の夢」展(東京都現代美術館、1999年)、「ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展」(ヴェネティア、2000年)、「SAFE DESIGN TAKES ON RISK」展(ニューヨーク近代美術館、2005年)への参加など、表現ジャンルの境界を超えて、広く評価を受けてきました。モードとアートの双方の要素を併せ持つ津村耕佑の多様な創造力は、そのまま現代における「表現」の新たな可能性と言えるでしょう。
今回の展覧会に向けて、津村は産業廃棄されていく運命にあった電源コード、LANケーブルなどを再利用して、織物を制作いたしました。リサイクル、エコロジーといったテーマは津村の得意とするところですが、ファッションにおける古典とも言える手編み、パッチワークといった手作業を、今回津村が敢えて選んだ背景には、ファンションデザイナーでありながら、同時に独りの純粋なアーティストであろうとする真摯な姿勢があります。津村は、手仕事の背景にある時間や労働によって生まれる目に見えない付加価値について考え、自身の創作活動が「クラフトやデザインとして括られ思考停止になってしまわないように」、「紐を絡ませる事で解放される精神について思考している」と言います。
津村は、今回の個展に寄せて、次のように語っています。
「モードが曖昧に溶け機能しなくなった都市の表層は戻ることの出来ないあの頃の温もりを求めて空中を彷徨っています。至るところに張り巡らされた無機質なコードのジャングル、ケミカルな材料で作られたナチュラルなデザイン、機能を掲げ傍若無人に振舞うこの開発というモンスターに愛情の表現として長い歴史をもつ手編みやパッチワークというクラフトの手法を施す事で良い眠りにつかせもう一つ夢のコードを作ろうとする試みです。」
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