見慣れた景色のなかで、いつも通りの日常を過ごしていても、何かのきっかけで現実に対して違和感を覚えることはないでしょうか。
私たちが直接知覚できる現実は、多様なメディアがもたらす圧倒的な量の情報に飲み込まれ、現実と虚構の区別さえ曖昧になりがちです。私たちは、私たちを取り囲む世界に対して、そして私たちが生きているということに対して、確かなリアリティーを感じられなくなってはいないでしょうか。それは、現代社会が抱える様々な問題のひとつの原因とも言えます。
そんな「酸化した」リアリティーのなかで育った現代のアーティストたちは、作品をつくるという行為そのものに生のリアリティーを求め、また虚構の世界を強固に築くことによって、作品のなかにリアリティーを生みだそうとしているように思えます。
椎名勇仁《Tuning fork》2009年、モルタル、磁石、砂鉄、アンプ、スピーカー、オーディオプレーヤー、子供箪笥
群馬県立近代美術館では、30歳未満の若いアーティストを対象とした公募展「群馬青年ビエンナーレ」を隔年で開催しています。応募作品は多種多様ですが、毎回、その時々の時代がもつ空気感のようなものを感じ取ることができます。
この展覧会でとりあげるのは、2000年代の「群馬青年ビエンナーレ」において大賞、優秀賞を受賞した7人のアーティストです。彼らの作品には、それぞれが求めるリアリティーがたちあらわれ、それと同時に、現代の若者をとりまく現実が映し出されることになるでしょう。
笹山直規《accident in the monitor side》2009年、透明水彩、モンバル紙
【出品作家】
江原一幸 えばら・かずゆき(1974- ) 群馬青年ビエンナーレ'01大賞
椎名勇仁 しいな・たけひと(1973- ) 群馬青年ビエンナーレ'03大賞
笹山直規 ささやま・なおき(1981- ) 群馬青年ビエンナーレ'05大賞
SATSUKI さつき(1980- ) 群馬青年ビエンナーレ'05優秀賞
大矢加奈子 おおや・かなこ(1983- ) 群馬青年ビエンナーレ2008大賞
永田惇哉 ながた・じゅんや(1987- ) 群馬青年ビエンナーレ2008優秀賞
松岡圭介 まつおか・けいすけ(1980- ) 群馬青年ビエンナーレ2008優秀賞
【展示内容】
絵画、彫刻、インスタレーションなど 50点程度
【関連事業】
アーティスト・トーク 各日午後2時?3時30分 [要観覧料・申込不要]
・1月23日(土) 椎名勇仁・松岡圭介
・2月20日(土) SATSUKI・笹山直規
・3月22日(月・祝) 大矢加奈子・永田惇哉
大矢加奈子《バスルーム》2009年、アクリル、油彩、カシュー・パネル
〒370-1293 群馬県高崎市綿貫町992-1 群馬の森公園内
TEL:027-346-5560