古代ローマ帝国は、人類史上比類のない長さと広さを誇りました。この展覧会では、「人類が生み出した最強の国家」と称される古代ローマ帝国の遺産を、現在に伝わる壁画・彫刻・工芸などの美術品と考古資料で紹介します。
《アレッツォのミネルウァ》
フィレンツェ考古学博物館
MUSEO ARCHEOLOGICO NAZIONALE FIRENZE © Daniel Virtuoso, Centro Promozioni e Servizi Arezzo
紀元前1世紀、天才政治家ユリウス・カエサルと、その遺志を継いだオクタウィアヌス(後のアウグストゥス)の活躍によって、都市国家ローマは共和政から帝政へと大きな変貌を遂げました。第1章「帝国の誕生」では、新たな政治体制を築き整えた権力者たちの英雄的な姿を通して、帝国の建設と継承の歴史を概観します。第2章「アウグストゥスの帝国とその機構」では、ローマの歴史や宗教にまつわるさまざまな作品から、帝国全土に平和をもたらしたアウグストゥスの統治システムを検証します。また第3章「帝国の富」では、豪華な宝飾品や生活用品、農器具などによって、「最も幸福で繁栄した時代」の帝国の豊かさと、それを支えた堅固な社会基盤の存在を浮き彫りにします。
《首飾り》
ナポリ国立考古学博物館
© Luciano Pedicini / Archivio dell'Arte
帝国絶頂の紀元後79年には、南イタリアのウェスウィウス(ヴェズヴィオ)火山が噴火します。これにより、南麓のポンペイは一瞬にして厚さ5メートルの火山灰に埋まりましたが、本展に出品される壁画や銀食器などからは、当時のローマ帝国の豊かな暮らしぶりが地方まであまねく及んでいたのをうかがうことができます。一方、ポンペイとは反対側の北麓では、5世紀末から6世紀初めの噴火によって、ソンマ・ヴェスヴィアーナが罹災しました。東京大学は2002年からその地のいわゆる「アウグストゥスの別荘」で発掘調査を進めており、その最新成果も紹介します。
《庭園の風景(南壁)》(中間部)
ボスコレアーレ、アンティクアリウム
© Luciano Pedicini / Archivio dell'Arte
《モザイクの噴水》
ボスコレアーレ、アンティクアリウム
画像データ提供:東京大学象形文化研究拠点(UT-PICURE)
本展は、ナポリ国立考古学博物館をはじめ、イタリア各地に所蔵される魅力的な作品約120点を一堂に集めました。日本においてこれほどの規模と充実した内容のローマ帝国展はかつてなく、この帝国の優れた遺産を堪能できる貴重な機会となります。
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