「絶対異質的自己同一Ⅱ」
今回のグループショーで取り上げる作品群は、人物像や顔を描いたものに加え、人間だけではなく動物や得体のしれないものが描かれたものまで含まれています。
物語への自己投影、変身願望に妄想癖、、、当然作家たちはそうした思考で絵画を描いている側面ももちあわせているのではないでしょうか。
自己と他者との間で揺れ動きながら、皆それぞれが直面する「自己とはなにか」という問題。
ここに焦点をあてた展覧会となります。
塑像をする如く絵の具をつけていくよう描き、色数を抑えながらもまったりとした質感により独特の人物像、人間でもなく動物でもないものを描くパリ在住のアリエマキ。
メキシコ留学の特徴を色濃く残した強烈な色彩で描かれた地に、鉛筆による緻密な表現を重ねる中山は、顔の真ん中で真っ二つに切断された狼の作品を出品します。
巧みな描写力と筆運びの速さから生み出される色彩感覚あふれた幻想的風景、そこに調和しながらもふっと風景から逸脱しているかのようにもみえる人物を描く小沢さかえ。
中山と小沢は、大阪の国立国際美術館で開催されている「絵画の庭」にて作品を発表しています。
「反重力バンドジョニー」という京都市立芸術大学出身メンバーで組まれたバンドでも活動してきた西松鉱二は、SONYのアーティストの時から時代を早く読み過ぎてしまう・・・そんな作家かもしれません。
まるで地球の重力に反したような思考で描かれた今回の作品はDMにもなっておりますが、点描で描かれた勝新太郎の顔になっているものです。名優勝新の迫力ある顔が、無数のドットの美しさに回収されていく感覚は、鑑賞者に異質的なるものへの自然なる移行の不思議さを体験させてくれます。
また画面に近づくとその点描が実はピースマークのような無数の顔であることに気付かされるのですが、そこでまた美しさから可愛らしさへ逸脱するする感覚の変異を感じさせられるのです。
そして「反重力バンドジョニー」のオリジナルメンバーである片野まん、彼は多様な時間と空間を一枚のキャンヴァスに表現します。
圧倒的な情報量を過不足なくその枠におさめることの難しさをしりつくした片野。多様なる異物の混入のはずが、描かれた後に異物ではないものとして浮かび上がる線描としての顔・・・。
特徴的な人物像(フィギュール)を描きヨーロッパを中心に活躍してきた黒田アキ。黒田もMinotauromachineという「動物から機械へと復活=再生的に相転移を起こす」ミュータントを作品を描きます。
神話と個人的欲望という狭間を行き来する抜け道をつくるような行為。自己とは異質でありながら、また同一であるという相転移をくりかえし生きている、そんなことを考えさせられる作品を展示いたします。
どうぞご高覧ください。
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