第二次世界大戦前に訪れた、大衆文化華やかなりしひととき。竹久夢二と同時代に「昭和の春信」と呼ばれ、挿絵や装幀、舞台美術などで活躍した小村雪岱(こ むら・せったい 1887-1940)という画家をご存じでしょうか? 埼玉県川越市に生まれ、東京美術学校で下村観山教室に学んだ日本画家ですが、在学中に泉鏡花と出会い、鏡花の小説『日本橋』の装幀を手がけたことを契機に デザインの世界に足を踏み入れました。 鏡花文学を絵画化したような美しい装幀で泉鏡花に、『おせん』など江戸の女を描いた挿絵で邦枝完二に、「一本刀土俵入」などの清新な舞台装置で六代目菊五 郎に、それぞれ篤い信頼を得たその仕事は、どのひとつをとっても伝統絵画の研究や浮世絵の系譜に根ざした独自の繊細な美意識に貫かれています。 そこにはまた、在りし日の日本の日々の暮らしの美が静かに息づいています。 この展覧会では、現在も多くの人を魅了し続ける小村雪岱の多彩な活動を、周辺の芸術家らとの交流や当時のモダンな美術・デザインを振り返りながらご紹介し ます。
出品点数:日本画 約50点、木版画 約20点、装丁本 約50点、舞台装置原画 約40点、その他(雑誌の挿絵など)約100点、 合計:約260点
※会期中一部展示替えがあります。
「青柳」
大正13年頃、絹・彩色、埼玉県立近代美術館蔵
「おせん」
昭和16年頃(没後の刷り)、木版、埼玉県立近代美術館蔵
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